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桜の木の下で
【学園物 官能小説】

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桜の木の下で-12

<8.回想>
その夜……気分転換にあたしは部屋の大掃除をしていた。
「ふぅ……こんな部屋じゃ彼氏がいても呼べないよなぁ……さ、次々……」
埃が積もった本をひとつひとつ拭いていく。
「あっ……」
あたしの手はある一冊の本で止まった。
「ひゃ〜、懐かしいなぁ……」
それは小学校の卒業アルバムだった。普段は開かないアルバムだけど、長野先生に久しぶりに会ったからだろう、無性に懐かしくなってあたしはアルバムを開いてみた。
「あっ、あたし発見……う〜ん、変わってないなぁ……」
笑っているけどちょっと陰のある表情、ボブカットの髪型。サチと出会って、本気で笑えるようになったという自負はあるけど、集合写真なんかを撮ると、今でもこんな顔になってしまう。
小さなため息をついて、更にページをめくると、
「あ……。」
長野先生だ。先生が写っている写真は、神妙な顔をしている集合写真と、4年生の時のクラス写真、そして委員会とクラブの写真、たった4枚だけだ。
だけど、4年3組は、あたしにとっては一番心に残っているクラス。素晴らしい思い出と、悲しい思い出が詰まったクラス。
あたしは4年生の2学期、ひどいイジメを受けた。それは、それまで仲が良かったグループで突然始まった。
最初は小さな無視、次は陰口、悪口。
それが、横を通る時に押してくるという直接的攻撃に変わり、靴隠しや「死ね」という手紙などになった。
『あんた生意気なんだよ。早く死ねば?』『島川に生きる価値なし!屋上から飛び降りちゃいなよ。』
なぜあたしがあんなに責められないといけなかったのか、あたしは今でもわからない。
とても耐えられず親にも相談したが、
「あんたにも悪いところがあるからよ。お友達を責める前にまず自分を見直しなさい。」
「そんな陰気なこと言ってたら家が暗くなるじゃない。」
と、取り合ってすらくれなかった。親を信じられなくなったのはあの時だ。
当時から引っ込み思案だったあたしは、先生に言った時に周りから「チクった」と言われることが怖くて、どうしても先生に言い出すことができなかった。
それでも親に追い立てながら学校にいっていたある日、あたしは誰も使わない東校舎トイレに呼び出された。
(あぁ、絶対何かされるな……)
東校舎までのほんの何十メートルの渡り廊下がひどく長く感じられたことを今でも覚えている。
トイレに着くと、すぐにあたしは昔仲良かったみんなに取り囲まれた。
「遅かったねぇ、島川〜待ちくたびれたよ。」
「ねぇ、何でまだ平気で学校来てんの?鈍感?」
「今日はねぇ、あんたがいつまでもたっても普通に生きてっから、ちょっとかわいがってやろうと思ってね。」
もうやめて……
言葉にならない言葉をのみこみ、あたしは目と口を固く閉じた。
「お前ら!何やってんだ!!」
その時、今までに聞いたことの無い怒気をはらんだ声が飛び込んできた。
あまりの圧倒的なその声に、あたしを含め全員がその場に完全に固まる。
そして、全員の視線が声の主に向けられた。
長野先生……あたしはあの時、太陽の逆光の中に見えた先生の顔を今でも忘れられない。
「お前ら、どういうことだ!どうして島川さんをこんな目に合わせているんだ!」
彼女たちは一様に気まずそうに目を逸らす。


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