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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの友情-2

「なんだよ、俺様がせっかく心配してやってんのに」
「心配?よく言うよ…その顔は、面白がってるだけだろ?」
「ははっ、ご名答!で、水沢嬢と何を話してたんだ?」
(……見てたのかよ?)
「別に、なんでもねぇよ」
「聖がどうとかって、聞こえたんだけどなぁ……」
世田は笑みを浮かべたまま、俺の反応を探るかの様に流し目をくれる。
(コイツ…しっかり聞いてやがったんじゃねぇか)

「悪趣味め」
「ははっ、よく言われる。てかさぁ、前々から訊こうと思ってたんだけど…瀬沼って、聖ちゃんとどういう関係?」
(ったく、馴れ馴れしく“聖ちゃん”なんて呼んでんじゃねぇよ……)
「オマエには関係ねぇだろ」
少しイラッとした俺は、吐き捨てる様に言った。
そんな俺を見て、世田はウンウンと、何を納得したのか首を縦に振っている。
「へぇ…そういうコトか!」
「何だよ?」
「べっつにぃ!まっ、せいぜい頑張って〜!」
そして世田は、俺の肩をポンポンと叩くと、妙に間延びする捨てゼリフを残して去って行った。


「ちょっと、瀬沼っ!顔貸しなさいっ!」
その日の放課後、いつもの様に教室に残っていると、何の前触れも無く水沢が俺の視界に割り込んで来た。
眉間にくっきりとした縦皺を刻んで、般若さながらの形相で俺を睨みつけている。
(また来たのかよ?最悪……)
また水沢の相手をしなければいけないのかと思うと、酷く苦痛だ。
しかも、朝の様子とは打って変わって、今の水沢は誰がどう見たって怒っている。

「何だよ?水沢」
「『何だよ?』じゃないわよっ!だいたいアンタがねぇ、いつまでもボケッとしてるから……」
水沢はそこまで言うと、急にハッとした表情を浮かべて周りをキョロキョロと見回した。
まだかなりの生徒が残っている教室は、水沢のせいでシーンと静まり返っている。
言うまでもなく、俺達は注目の的だ。

「やだ、私ったら…瀬沼君、ちょっと一緒に来て貰えるかしら?」
それから水沢は、『オホホ』とわざとらしく笑うと、俺の胸ぐらを掴んで無理やり教室の外へと引っ張り出した。


「おい、水沢!どこまで行くんだよ」
水沢はズンズンと、俺を振り返らずに歩いて行く。
服を掴まれたまま変な体勢で歩かされ、精神的にも体力的にも疲れてきた。

「コラ、水沢っ!ちゃんと聞けっ!」
強く声を張ったところで、やっと水沢は俺を放して振り返った。
「うっさいわね、ちゃんと聞こえてるわよ。ただでさえ腹立ってんのに、更にイライラさせないでよっ!」
(それは俺のセリフだろ……)

「で?こんな所まで連れて来て、なんの用?」
俺は苛立ちを抑えて、辺りを見回した。
校舎の端まで連れて来られたせいか、目の届く範囲に、人影は全く見えない。
「私がアンタに用って言ったら、聖の事に決まってるじゃない」
(ったく…水沢と聖の話をしたのは、今日が初めてじゃねぇか……)
「で、聖がどうしたんだよ?」
「どうしたもこうしたも無いわよっ!だいたい、アンタがそうやって他人事みたいに構えてるから、松田のヤツが付け上がるのよっ!」
「は?」
「あの松田の勝ち誇った顔といったら…あーっ、ホント、思い出すだけで腹立つ」
言いながら水沢は、ガンガンと床を蹴飛ばしている。かと思いきや、また俺の胸ぐらを両手で掴んだ。


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