投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

10年越しの約束の最初へ 10年越しの約束 65 10年越しの約束 67 10年越しの約束の最後へ

10年越しの友情-3

「それもこれも、瀬沼っ!アンタが早く聖を捕まえないからこんな事になるのよっ!聖のことが好きなんでしょ?なら、早く動きなさいよ、早くっ!」
「早く、って…何をそんなに焦ってんだよ?」
「じゃあ訊くけど、なんで瀬沼はそんなに余裕かましてんのよ?言っとくけどねぇ、聖は超絶鈍いのよ。何もしなかったら、永遠に何も伝わらないんだからっ!」
「だからって、今はそんなに焦る必要、無いだろ?鈍感な相手になら、尚更」
「そうやって落ち着いてられる理由が分からないわ。松田に聖を取られても良いの?聖と会えなくても良いの?」
「今まで10年も待ってたんだから、今さら1日や2日会えなくたって、どうって事ねぇよ」
我ながら、本当かどうか疑わしいセリフのオンパレードだ。
だが、売り言葉に買い言葉…なのか、気付いた時には言葉が口を突いて出ていた。


まぁ、水沢の前ではそんな強気なことを言っていても、本心はやっぱり、毎日でも会いたいワケで……
何でもないフリをしていても、実際に会えない日々が続いてみると、さすがにストレスが溜まる。
聖と会えなくなって、もうすぐ1か月…待ち続けた10年よりも、長く感じられる。

そんな俺に追い討ちをかけるのが、水沢の存在そのもの…毎日毎日、同じ様なセリフで嫌というほど噛みついてくる。
聖に会いに行けないのは、水沢がこうやって俺の所に来るせいもあるんだって…本人は、気付いているのだろうか?


「ちょっと、瀬沼っ!いつまで余裕かましてるつもりっ!?」
教室に誰もいないのを良いことに、今日はいつにも増してワンワンキャンキャン…やかましい。
水沢はいったい、何をしたいんだか。

「アンタと松田を見てると、ムカつくのよっ!特に瀬沼っ!アンタのいかにも我関せず的な態度が最高にムカつくわ」
(勝手にムカついてろよ……)
「だいたいアンタはねぇ…ちょっと、瀬沼っ!聞いてるのっ!?」
(聞いてるよ。むしろ、その言葉は聞き飽きたって……)
「良いわ。そういう態度に出るんだったら、私にだって考えが有るんだから。瀬沼なんか、聖に泣かれて困るが良いわ!」
それから水沢は、昔のアニメさながらに俺に人差し指を突きつけると、『少しここで待ってなさい!』と言って教室を出て行った。


水沢がいなくなった教室は、いつも以上に静かに感じる。
罵声とも取れるあの言葉の数々を聞いた後だけに、今はこの静けさが心地好い。

(待ってろと言われてもなぁ……)
正直、帰ってしまいたい。水沢に噛みつかれるのは、もうウンザリだ。
けど、今帰ったところで、明日その事を責められるのは目に見えている訳で…それを思うと、なかなか腰が上がらない。


しばらく悶々としていた所で、不意に廊下からパタパタとした足音が響いて来た。
(水沢め…もう戻ってきたのかよ?)
結局帰るタイミングを逃した俺は、狸寝入りを決め込んだ。
あわよくば、寝ているからと諦めて立ち去ってくれるかもしれない。
まぁ、あの水沢にそんな優しさが有るとも思えないが……


10年越しの約束の最初へ 10年越しの約束 65 10年越しの約束 67 10年越しの約束の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前