投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

閑村の伝統
【その他 官能小説】

閑村の伝統の最初へ 閑村の伝統 8 閑村の伝統 10 閑村の伝統の最後へ

閑村の伝統〜恋人〜-1

「宗ちゃん、学校に遅刻するよ」
部屋のカーテンを開けて室内に光が差し込み、一人の女性が身体を揺さぶる。
「んん…あ…おはよう…」
少年の名前は対馬宗太(つしまそうた)。
現在17才の、高校生だ。
柔らかな笑みで宗太を見つめる女性は、対馬香苗(つしまかなえ)。宗太の恋人…などではなく、彼の兄嫁である。
宗太は山間の村の育ちなのだが、山を下りた麓の町に高校があるため、移動の便が悪い。
そのため、高校に通う間、町内に住む兄夫婦の厚意で彼らの家に厄介になっているのだ。
「はい。よく起きました」
香苗は嬉しそうに宗太の頭を撫でる。
「…香苗さん。3つしか年違わないんだから、子供扱いしないでよ」
「え〜?だって可愛いんだもん」
香苗は撫でるのをやめる気配はない。
香苗の年は20才で兄は30才。
どうやってこんな若くて美人な嫁をもらえたのか…宗太は純粋に兄が羨ましかった。
「昨日は村の祭りで遅かったから寝不足かもしれないけど、がんばってね」
香苗の言葉に、宗太の心臓がはねあがる。
(昨日…姫巫女祭…)
昨夜起きたことを思い出し、宗太は顔を赤くする。
何だか学校に行くのがかなり緊張してきた。
「ん?どうしたの、宗ちゃん?いきなり顔を赤くして」
「な、何でもないから!」
宗太は誤魔化すように急に起き上がる。
「??…まあいいけど、朝ごはんできてるから、顔洗ったら来てね」
「う、うん…そういや兄貴は?」
「慎太さん?もう仕事行っちゃったよ。それより早く準備しなさい、ねぼすけさん」
笑って、香苗は部屋を出て行った。
「学校、か…」
宗太は気だるい身体のまま、洗面台へ向かった。



この町に唯一存在する高校、私立神谷高校。そこに現在宗太は通学している。
普通科のみの男女共学校だ。
生徒数は全学年で1000人ちょっと。規模としては中堅クラスだろうが、さすがに私立校なだけあって、建物も綺麗だし、各施設も十分整っている。
何でもここを創設した人は若輩ながらかなりの手腕の持ち主で、日本でも指折りの大富豪らしいのだが…それはまた別の話だ。
「おお、今日は早いんだな」
「本当。珍しいわね」
宗太が教室に入ったとたんに、二人の男女が声をかけてきた。
「麗子はともかく、充だっていつも遅いくせに。そっちこそ今日はどうしたんだよ」
宗太も軽い調子で言葉を返す。
二人の名前は白沼充(しらぬまみつる)と鏡麗子(かがみれいこ)。
二人とも宗太の幼なじみだ。
宗太は山間の村、充と麗子は麓の町に住んでいたが、そんな距離など関係なく、昔からよく遊んでいた。
「昨日みどりがうちに帰ってたからな。目覚ましいらずだったんだよ」
「え?そうなの?知らなかった…」
その言葉を聞き、麗子が驚きの声をあげる。
…みどりは宗太達より一歳年下の女の子で、充や麗子と同じく、宗太の幼なじみでもある。
そして、充の実妹でもあるのだ。
みどりは今はここを離れて遠くの高校に1人暮らしをしながら通っているので、宗太達はしばらく会っていなかった。


閑村の伝統の最初へ 閑村の伝統 8 閑村の伝統 10 閑村の伝統の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前