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閑村の伝統
【その他 官能小説】

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閑村の伝統〜恋人〜-6

「ちょっ…!何で泣くんですかっ」
「だって…絶対断られると思ってたから…私、汚れてるし、先生だし、年上だし…それでも、気持ち抑えきれなくて、告白して…対馬君に、好きって言ってもらえて……嬉しいよお…」
陽子の涙は次から次に溢れてくる。
宗太はしばしためらった後、陽子の身体をそっと抱き締めた。
「あ……」
「…汚れてるなんて、言わないでください。さっきも言ったけど、先生は汚れてなんかいません。俺の大好きな先生は、とっても綺麗で、俺の憧れの人です」
「対馬、君……う、うう…ひっく…」
更に泣き出してしまった陽子。
泣くのを止めさせようとした行為だったが、逆効果だった。
(でも、まあいっか)
彼女の涙は、悲しみではなく、喜びからくるもの。
そんな涙なら、いくらでも流してくれていい。
宗太はそう思った。
…せめて、シャツに涙と鼻水がつかない程度なら。
チーン!
「…俺のシャツで鼻かまないでください」
陽子に突っ込みながら、宗太は彼女の頭をポンポンと撫でてあげた。




しばらく経って、ようやく陽子が落ち着いた時には、もう昼休みが終わろうとしていた。
まだ一緒にいたいという思いが二人ともあったが、さすがに授業をサボるわけにはいかない。教師の陽子は特にだ。
とりあえずお互いの連絡先を教え合って、陽子は職員室、宗太は教室へと戻っていった。

「…あ、宗太…どこに行ってたの?お昼ちゃんと食べた?」
教室に戻ると、麗子がどこか心配げに聞いてきた。
昼休みは必ずといっていいほど充と麗子と過ごすため、今日の宗太の行動を不思議に思ったのだろう。
「ああ、大丈夫。ちゃんと食べたよ」
「そう。………ねえ、何かいいことでもあったの?顔、にやついてるけど」
「へ?」
言われて、反射的に頬を触る。
その行動は、麗子の言葉を肯定しているも同然だった。
「何かあったんだ…」
「いや、それは…」
「何があったの?」
ズイ、と宗太に詰め寄ってくる。何だか怒っているようにも見える。
「な、何でもいいじゃんか。何でそんなに気にするんだよ」
特に深い意味はなく言った言葉だったが、言われた麗子の表情が変わる。
「何でって……そうだね。私と宗太はただの友達だし…ごめん、さっきのは忘れて」
麗子は目を伏せて呟くと、宗太のもとを離れていった。
「??…何なんだ…?」
麗子の言動の意味がよく分からないまま、宗太は自分の席に座った。

「さあみんな、お昼も元気に授業始めましょう!」
それから程なくして、満面の笑顔で周囲にご機嫌オーラを放ちながら、陽子が教室にやって来た。
あまりのニコニコっぷりに、生徒達も呆然とする。
「…先生。何かいいことあったんですか?」
クラスメイトの一人が控えめに突っ込んだ。
「えへへ〜。分かる?分かる?」
その言葉に、陽子は頬に手を当てすごく嬉しそうに微笑んだ。
「もう先生の人生の中でもかなり嬉しいことがあってね〜。幸せでしょうがないのよ〜」
ニヤニヤと緩んだ頬が戻らない陽子。
日頃から明るい性格の彼女だが、ここまでグニャグニャな姿は見たことがない。


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