陽だまりの詩 6-10
「アキ」
俺は振り返らずに言った。
「ごめん、俺、好きな人がいるんだ」
「…」
「俺、その人のこと、アキより好きなんだ。たぶん、いや、間違いなく」
苦しかった。
本当に愛していたアキ。
しかし、こうして再会したけれど、アキへの気持ちは諦めから変わることはなかった。
今の俺には、好きな人がいる。
奏。
俺を暖かい気持ちにさせてくれる、暖かく包んでくれる存在。
アキはスッと離れる。
「…ごめんね、ハル」
「いや、俺こそ」
「ばっか!謝んない!」
アキは笑う。涙目で。
「でも、お願い、何もしないから、一緒に寝てもいい?」
「ああ」
目覚めると、アキが昨日いた痕跡は全くなかった。
布団も片付けられ、荷物もない。
本当に夢だったかのようだ。
だが、メールがきていることに気づいて携帯を開く。
『昨日はごめんね、私のことは自分でどうにかするから。ハルも頑張ってね』
俺はアキを救ってやることはできないのか…
少し後悔する。
いや、後悔はできない。
もうアキに何もしてあげることはできないから。
俺は頭をかきながらシャワールームへと向かった。