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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 prologue-1

「すいませんっ」

ふと、俺は足を止めた。
振り返る。

休日の街中。
混雑する横断歩道。

その声は俺へのものではなかった。

「すいませんっ、すいませんっ」

しかし、その声は何度も俺の耳に入ってくる。

見つけた。

女の子が人混みの中をかき分けながら、懸命に車椅子を漕いでいる。
気を利かせて避けてくれる人もいれば、無視する人もいる。

「すいませんっ」
彼女は立ち止まる俺の横を抜けていった。
「……」
俺は極めて自然に彼女の後ろにつき、驚かさないようにゆっくりと車椅子を押した。
「えっ」
当然、彼女は驚いて振り返る。
「ほら、信号変わるから急ぐぞ。ちゃんと前見てろよ」
「……はい」

無事に長い横断歩道を渡りきり、広い道に出る。
「もう大丈夫だな」
「あ、ありがとうございます」
彼女はこちらを見ようとせずに頭を下げた。
「……じゃあな」
微妙な空気になったので、俺は立ち去ろうとした。
「あの!」
だが、彼女が大きな声で呼び止めた。
そんなこと思っても見なかったので、正直驚いた。
「…ん」
彼女はいつの間にか、こっちを向いていた。


綺麗な女の子だった。

目は大きく、整った顔立ち。肌は白く、腰までありそうな長く黒い髪。
歳はわからないが、幼く見える。

「助けていただいて本当にありがとうございました」
「いいよ、気にすんな」
すると彼女は俯き、何か小さい声でつぶやいた。
無視するのもなんなので反応してみる。
「なに?まだ何かあるの?」
「あ、あの…重ね重ね申し訳ありませんが…」
「あ?」


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