双子月2〜葉月〜-5
「場合によっては学校とかに言っちゃいますよ。知らないおじさんに無理矢理されたって。」
男の顔からは血の気が引いていた。さっきまでの淫欲に溺れたいやらしさなど微塵もなく、手をわなわなと震わせていた。
「なっ!何を言うんだ、君は!」
「私、本気ですけど。」
そうして葉月は、男から相当な金額の「謝礼」をもらった。
今日のことは誰にも言わないという約束つきで。
それから美月は何人もの男から、同じような手口で「謝礼」を集めた。
しかし、高校に入ってからはあまり成功していなかった。
東条のせいだ。
なぜか東条が現われて邪魔をするのだ。
お前のことまで助けてやれない。
葉月はその言葉がやけに耳に残っていた。
「なんなのよ、偉そうにっ!」
葉月は東条の言葉をかき消すように叫ぶと、どことも宛てなく乱暴に歩いた。
クラブが開くまでにはあと少し時間がある。どこで時間を潰そうか、葉月は携帯電話を握りながら人混みの中へ消えた。