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かつて純子かく語りき
【学園物 官能小説】

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かつてクミコかく語りき-9

「で?これで満足か、オマエは」
クミコとの電話を切ってから、私に背中を向けている策士に声をかけた。
「まあ、筋書き通りではあるんですが」
隣りに腰を下ろすと、彼は飲みかけのお茶を傾けた。カテキン成分がたまっていたらしく、かすかに顔をしかめる。
「ジュン、お代わりいる?」
目で返事をすると、タキタは湯飲みを2つ手にとってから立ち上がった。台所へと向かう姿を見ずに言い放った。
「マッタく……。どこからどこまでがオマエの作戦なんだか」
タキタはお湯を汲みながら、くすくす笑った。
「さあね」
おそろいの桜の模様がついた湯飲みに、なみなみと若草色のお茶が注がれていた。
彼は隣りに座り、くいと私の肩を抱いた。
「……」
コイツめ、シラを切る気だな。
私がじっと見つめる中で、タキタは水面を見つめたままにっこり笑った。
「僕にもわからないよ」
ふうふうと冷ましながら、一口啜る。
「まあ、後は若い二人にお任せしようじゃありませんか」
真っ白になった眼鏡の奥で、タキタが何を考えているのかはわからない。
「願わくは、神仏の加護があらんことを。……なーんてね」
全く、コイツには敵わない。
私も彼にならって、一口お茶を啜った。
「ぜぇーんぶ手中にオサメてるヤツが、よっく言うよ」
タキタは聞こえない振りをして、私の肩をぽんぽんと撫でた。
「ン……」
クミコに特定のヒトができるってのは、今に始まったことじゃナイ。
だけど、藤川オトートとだと、ホンキっぽくて。ゼンブ、持ってかれちゃうっぽくて。
私も、ワガママ娘だな。
「ダイジョブ、だよな」
湯呑みの水面に、八の字に下がった眉が映る。
タキタの眼鏡は白いままで、私は思う存分情けない顔をした。
一気に飲み干したお茶は、なんだか、ちょっぴり切ない味がした。
よし!明日はうんとオシャレして、クミコを迎えに行ってやろう。
オトートには簡単に渡さんぞ!!


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