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かつて純子かく語りき
【学園物 官能小説】

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かつて「茅野ちゃん」かく語りき-1

茅野久美子、花の20歳。
先日のネンザ事件も記憶に新しいが、あれからすったもんだがあり(それについてはまたの機会に!)、行きつけのクレープ屋さんの藤川さん(弟)と付き合うことになった。
一応、この女性には伝えておかねばなるまい。
「えーっと……」
すでに初夏を思わせる日差しに囲まれた大学のカフェテリアにて、私とその女性は差し向かいに座った。窓の向こうには赤いツツジが咲き乱れている。
いざ、勝負!
「ワタクシ、茅野久美子。藤川さんとお付き合いいたします!」
そこまで言ってから顔を上げると、目の前の女性は顔いっぱいで笑っていた。
「ヨカッタなあ。おめでとう!」
「ありがと?」
ほっと溜め息をついてから、キャラメルマキアートに手を伸ばした。甘い香りが鼻をくすぐる。
藤川製以外では、まだブラックだと飲めないままのお子ちゃまである。
だって、特別おいしいんじゃもん。藤川さんの。
なーんて、早速ノロケてみたり。
「あ、今や?らシィこと考えてるダロ?」
ジュンがにやにやしながら、あたしの緩んだ顔を指摘する。
「ちっ、違うもん!」
必死で否定するも逆効果。顔が笑っちゃうのを抑えきれんし。
「ウムウム。私も一緒に働いていて気の利くイイヤツだと思ってたゾ」
「なん??その上から目線」
あたしの知らない藤川さんをジュンが見ているんだと思うと、ちょっぴり妬けてしまう。
じとっと睨むと彼女はくすくす笑った。
「そうニラむな。ま、なかなかの人材だぞ。チカラも強いし、手先もキヨーだし、頼れるオトナだし?」
うんうん、と頷く。ジュンの言葉に加えることはない。
「それにジツは……」
そこでジュンは小声になる。私もつられて彼女の口元に耳を持っていった。
ジュンの黒目がちの瞳はキラキラ光っていて、瞬きを何度か繰り返した。ジュンが面白いことを思いついた時のクセだ。
「ヤツは、サクランボの茎を舌で結ぶという技さえもエトクしている」
「ええっ!?」
「ちなみに、タキタもできる」
「えええっ!??」
二段オチか!ジュンったら、いつの間にこんな技を……。
でも、滝田君が真面目にサクランボの茎と格闘している姿を想像すると、結構おもしろい。
けたけた笑うあたしを見ながら、ジュンは目を細める。
「と、ゆーコトはだ」
ジュンはとろりとしたロイヤルミルクティーを一口含み、ちろりと舌で唇を舐めた。
「?」
その艶っぽい所作が、この昼下がりのカフェテリアにあまりにも不似合いで、あたしはつい凝視してしまう。
彼女の唇があたしに近づいてきて、すっと髪をかきあげられる。
「キスが、ウマいってコトだぞ」
耳元でそっと囁かれる。ぞくっとしてつい身体をひっこめた。
「……ちょっとっ!」
ジュンはころころ笑っている。
も?、滝田君。妙なこと教えんでやっ!
「いやいや、クミコはぽ?っとしてるから心配だったンだ。ヘンなオトコにひっかかるンじゃないかってな」
「余計なお世話じゃ!」
持っていたストローでふわふわミルクをぐるぐるとかき回す。氷がグラスに当たる音が煩わしい。
「さっきのだって、何されるかワカンなかっただろう?」
「黙りんさいっ!」
一気に飲み干すと、溜まっていたキャラメルソースが舌に残った。あまりの甘ったるさにうんざりする。
ジュンはというと、これみよがしに長っ細い脚を組んでから、ゆっくりミルクティーを味わっていた。
何なん、そのオトナの余裕!
わざと音を立てて氷を一つ口に含んでから舌の上で転がしていると、さっきのジュンの言葉を思い出してしまい、あわてて噛み砕いた。

藤川さんの、キス。
うまいかどうかなんて、知らんもん。


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