ジャム・ジャム・ジャム-15
「あたしの勘の凄さ、教えてあげる」
500Gコインを手にするジャム。
彼女はコインを高く投げると、それを手の甲で受け止めて言った。
「表よ」
言って、左手の甲を押さえた右手をそっと開いた。
コインは表。
「まぐれ当たりなんざ、俺は信じねえよ」
エイジは吐き捨てて、ジャムからコインを奪い取った。
「第一、お前が投げてお前が取ったんじゃ、イカサマだってし放題じゃねえか」
「いいわよ、あんたが投げてみて」
ジャムがあっさり言う。
エイジは先程ジャムが投げたよりもずっと高く投げ――素早くコインを受け止めた。
「表ね」
考えるでもなく、ジャムは言う。
エイジはおそるおそる右手を上げた。
コインは表だった。
「なッ!?」
「信じてくれた?」
「まだだ! 二回だけじゃ偶然って線も捨てきれねえからな!」
そう言って、エイジはまた再びコインを投げ――
およそ三十回に渡るコイントス。
ジャムは百発百中、コインの表裏を当てて見せた。
これにはエイジも、彼女の超人ともいえる勘を信じないわけにはいくまい。
「こんなあたしがいたら、便利じゃない?」
にっとジャムは笑って二人に言った。
はっきり言って、便利どころの話ではない。彼女がいれば億万長者も夢ではないのだ。
ダナは目を輝かせてジャムの手を取った。
「こちらこそ、狭い船に狭いアジトだけどよろしく頼むわッ!」
欲しかったコートが買える、と喜ぶダナ。
そんな彼を見て笑みを浮かべたジャムは、今度はエイジに視線を移した。
「あんたは?」
上目遣いで問うジャム。
エイジはそんな彼女からは視線を逸らし、言った。
「……好きにしな」
第5章 うるさいのを背負い込んじまった
「此処が、二人のアジト」
ギャラクティカイーストサイドの第五居住区にある、黄色い壁の住宅ビル。
イーストサイドの労働者達が多く住むこのビルの三階に、二人のアジトはあった。
格安の家賃のおかげで、どこもかしこも破れたり壊れたり。
それでも部屋は広く、キッチン・シャワー・トイレ付きだ。
ジャムは物珍しそうに辺りを見回していた。
「此処は?」
「だああ――ッ! 駄目! そこ、駄目!」
居間に接したドアのノブに手をかけたジャムを、エイジが必死で制した。
怪訝そうな顔をするジャムに、ダナが笑いながら言う。
「そこ、エイジの部屋よ」
「ふうん」
それを聞いたジャムは、ドアを開けるべくノブを引っ張る。
しかし、部屋を見る前にエイジがばたん、と勢い良くドアを閉めた。
「馬鹿野郎! プライバシーの侵害だッ!」
「ケチ」
「エイジはね、エッチな本でいっぱいの部屋を見られたくないのよ」
そうダナがひそひそとジャムに耳打ちする。
軽蔑の眼差しを向ける二人に、エイジが青筋を立てた。
「でたらめ言うな、コラ! んなもんねえよ!! ……ちょっとしか」
「そしたら、此処はダナの部屋?」
既に興味は反対側のドアへ行っていたジャムが、エイジの言葉は無視してダナに問うた。
そうよ、とダナは答えてドアを開ける。