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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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ジャム・ジャム・ジャム-16

「う……」
その扉の奥は、別世界だった。
ピンクのフリルとレースに塗れたメルヘンの世界に、思わずジャムの顔も引き攣る。
「素敵でしょう」
うっとりと、ダナが言った。
「やがてはこンなお家に住みたいと思ってるの、アタシ」
誰と住みたいのか、などという突っ込みは心の中に留めておいて、ジャムはシャワールームへ向かった。
そんな彼女の後姿を見やり、エイジは溜息をつく。
「やれやれ、うるさいのを背負い込んじまったな」
「いいじゃないの、悪い子じゃなさそうだし」
可愛いしね、とダナ。
エイジはふんと鼻を鳴らした。
「さて、と。俺は仮眠でも取るかな」
言って、エイジは居間のソファに寝転がる。
ジャムの一件もあって、エイジもまた大分疲れているようだった。
「それじゃ、アタシは買出しにでも行ってこようかしら」
ジャムという財布があるせいか、ダナは少し浮かれた様子で買い物メモを書き出す。
「パンに卵、小麦粉と……ジャムは何がいい? イチゴ? ミックス?」
「断然マーマレード」
「マーマレードね……よし。それじゃエイジ、行ってくるわね」
「おう」
右手を上げて応じるエイジ。
「あ、仮眠とったら、シャワーの調子見ておいてくれない? 多分平気だと思うけど、コックが固いかもしれないから」
「分かった分かった」
既に半分夢の中なのだろうか。
おざなりな返事に、ダナが呆れたような表情を浮かべる。
まあいいかと肩を竦めると、ダナは部屋を出て行った。

ダナが買い物に出かけて数分後。
「ダナ、いる?」
再びジャムが居間に顔を出した。
シャワールムからトイレ、キッチンまで見て回ったジャムが居間へ戻ってくると、ソファで眠りこけているエイジの姿。
ダナの姿はなく、テーブルの上に書置きがあるだけだった。
「ダナは『買い物行ってきます』、か」
それを読み上げ、ジャムはふうと息をついた。
「参ったな、シャワー浴びたかったのに」
言ってちらりとエイジを見やる。
単にシャワーの許可を得るのに、この気持ち良さげに睡眠を貪っている男を起こすのは気が引けた。
「いいか、シャワー借りるくらい」
呟いて、ジャムは再びシャワールームへと入って行った。

「んあ」
ザー、という音にふとエイジが目を覚ました。
欠伸を噛み殺し、大きく伸びをして時計を見やる。
「……まだ二十分も寝てねーじゃねーか」
妙に気だるい身体を起こし、エイジは再び欠伸をすると、呆けた顔で呟いた。
(雨かと思ったけど)
夕暮れ時に茜色に染まった空。
雨が降っていないにもかかわらず、ザーという音。
(そういや、出かけにダナがシャワーだの何だの言ってたな。あいつ何水を出しっ放しにしてるんだ?)
寝ぼけた頭のままでエイジが起き上がった。
シャワールームまで近付くと、何やら中が騒がしいのに気付く。
(ダナの奴、何をしてんだ?)
出かけた筈のダナがシャワールームにいると勘違いするくらいに働いていない頭で、エイジは中の様子を伺った。
「?」
そして、訝しげに首を傾げると、シャワールームのドアを開ける。
「おい、ダ……ッ!?」
「や……」
一気に目が覚める。
エイジの瞳に飛び込んできたのは、唖然としたジャムの顔――そして白い身体、胸元に聳える双丘。


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