「S女とM男の恋愛事情」-3
…あれ?なんか俺ってMっぽくない?っていうか彼女、Sに超進化してるよ、エボリューションだよ…最終兵器だよ…。
泣きたくなってきた俺。
「ああ?アタシに意見する気?アンタ、誰と付き合いたいわけよ?」
「ひっ…すみません、すみません!おおおおっしゃる通りです!」
ひたすら頭を下げる俺。な、情けない!
「じゃあ、もっぺん言ってみな。自己紹介から告白まで、通して一本。つまんなかったら即カット、オマエもカットでサヨウナラ、だ」
艶のある笑みを浮かべ、彼女が迫る。
こ、恐い…。
俺は悟った。もう逃げられない、と。
ごくりと生唾を飲み込み、おもむろに口を開く。わざとハズれた答えを返してカットされるべきだ、とどこかで賢明な俺が忠告する。反面、せっかく彼女ができるかもしれないチャンスを逃すのか、と下心のある俺が背中を押す。
しかしどう返事するべきなのか?
「お、俺は…ドM…102号、村田充彦…。あ、ああ貴女の奴隷にしてください…」
要点だけ言ってみた。
途端、弾かれたように笑う彼女。
「あっははははっ!面白いじゃねぇか!自らドM宣言、しかも102号って何のナンバーだよ!合格合格、ミツヒコ、だっけ?よろしくな?」
ひとしきり笑った後、そう言って笑顔を見せた彼女。その笑顔は極上で、俺はドキッとする。
…うん、やっぱり可愛い。俺、Mでいいから彼女の傍にいたい。
「じゃあ、俺と…?い、いいの?俺なんかで…」
上手く行ってしまったのが不思議だった。俺は何も取り柄がない。恐る恐る尋ねる俺。
「従順そうだからな、とりあえず合格だ。前々からお前はMだと直感してたよ。ああ、遅れたな。アタシは園田さゆり、メゾン・ド・Sの201号に住んでる。イニシャルSS、お前とは全て正反対だな」
「う、うん…よよ、よろしく…」
こうして俺と彼女の、とんでもなく奇妙な関係がスタートした。
多少先行きが不安ではあったが、俺は少しでも彼女に釣り合うように努力しようと思う…って、それはドMになるべきなのか?…いやいや、そうじゃなくて、身なりとか…ん?まさか俺ハードボンテージな彼女に麻縄だけ着用強制されたりして…?いやまさかそんな。落ち着け、俺。そう、付き合ってみなければわからない。
…でもやっぱり、不安だなぁ…。