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「S女とM男の恋愛事情」
【大人 恋愛小説】

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「S女とM男の恋愛事情」-1

俺は村田充彦(ムラタミツヒコ)22歳、職業はとある会社の
営業マン。伸び悩む営業成績に毎日溜息が絶えない平社員だ。
いつも疲れきって帰る先は、家賃が安い1DKのメゾン・ド・Mの102号。だからといって俺はドMではない。
そんな俺のひそかな楽しみ、それはお向かいの、ここより豪華なメゾン・ド・Sの201号に住んでいる美人なあのコと挨拶を交わすこと。
朝の通勤で、時間が一緒になるのである。勿論、俺がわざと合わせているのだが。
彼女の苗字だけはわかっている。確か、『園田』さんという。
一度そう呼ばれているのを聞いたことがあるんだ。
俺はバス停まで、彼女は駐車場まで。その短い距離にエンカウントするべく、俺はいつも早起きしてその時刻10分前までに用意をすませ、鞄を抱きしめながらじっと窓の外を眺めているわけだ。彼女が階段を降りてくる姿が見えると、猛ダッシュで靴を履き鍵をかけて、偶然を装い彼女と出会い、挨拶をする。
一日で1番幸せな瞬間だった。この瞬間が終わると家に帰りたくなるのだが、まだ出勤すらしてないので仕方なく出勤している毎日。…ストーカー?失礼な。断じて違う。
彼女に想いを打ち明ける勇気は、ない。なぜなら俺は自分に自信がないからだ。
顔も平均以下、身長も平均以下、そして何より、俺はオタクだった。以前宅配でフィギュアを頼んだとき、宅配の若い男性にもバレたくらい、自他共に認める、オタクだ。どうしてバレたか?実は俺も驚いたんだが、聞いてくれるか?それを頼んだ会社の社名は全然それらしくない名前だったし、商品名も書いてあるわけじゃない。なのにその宅配の若いイマドキな男は見破ったのだ!
「村田さんて、お宅ですか?」
驚くだろ?咄嗟に「はい、オタクです」と答えてしまったが、
なぜバレたんだろう?その男は不思議そうに首を傾げていたが、それはどういう意味だったのかも不明だった…。とにかくバレバレらしいのだ。
だから、彼女に告白なんてとんでもない!
しかし、そんな日常を繰り返しているうちに、俺はついに告白する決心をした。
俺は夜、たいていネットの波に乗っているのだが、いつも活用させてもらってる「お茶んねる」という、大手コミュニケーションサイト、通称「オッチャン」の掲示板で、この恋愛を相談してみたところ、思いがけず多大な声援をいただいたわけだ。
電車○のパクリ?いや別にあやかりたいわけではない。むしろ声援してるヤツらこそあやかりたいのかも知れなかったが、とりあえず電○男も上手くいったのだから、と告白する勇気をいただいた。


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