THE 4 seasons 〜AUTUMN leaves〜-1
赤や黄色の鮮やかな落ち葉が舞い散る秋、偶然再開した2人――。
AUTUMN leaves
「秋良?」
突然声をかけられて振り向くと、そこには忘れはしないあの人がいた。
「涼?」
涼は高校時代に付き合っていた人だ。
「久しぶり。元気だった?」
大学の授業が昼までで終わった帰り道。涼は高校卒業と同時にここから離れた街で就職したと聞いた。だからもう、会うことはないと思っていた。
「……うん。どうして……こっちに……いるの?」
声が掠れてうまく話せなかった。もう忘れていた筈なのにどうしてこんなにも動揺しているのだろうか。
「実はさ、春の人事異動でこっちの支社で働くことになって帰ってきてたんだ」
「そっか……」
「今、時間ない? もし良かったら、少し話そうよ」
2人が入った喫茶店。そこは高校生の時にもよく来た喫茶店だった。昔と変わらない懐かしい雰囲気だ。2人は窓際のテーブル席に向かい合って座った。
「懐かしいな。昔はよく来てたよな」
「うん。懐かしいね」
店のマスターがコーヒーをいれてくれた。
懐かしい味、懐かしい雰囲気の中、2人の話題は自然と高校時代のことになる。思い出話に花が咲く。
「――俺たちが付き合ってたのもこの頃だよな」
不意に涼が言った。ここまで自然とこの話題を避けていたのに。
「そう……だね」
オレンジの西日が2人の姿を染めている。
「……今更だけどさ、なんであの時『別れたい』なんて言ったの?」
別れを切り出したのは秋良の方だった。高校3年、受験生の秋。
「涼……、別れて欲しいの」
「なっ……! なんだよ、突然!」
突然切り出された別れ話しに驚きを隠せない涼。
「私、もう涼のこと信じられない……」
「だっ……て、涼が……浮気したんじゃない」
静かにそう答えた。
「私、見たの。女の人と抱き合ってる姿。その前にもその人と歩いてるの見た」
涼は黙って秋良を見つめている。沈黙が続いた。やがて、涼が大きな溜め息をついてコーヒーを飲んだ。
「違うよ。浮気じゃない」
ゆっくりと涼は言った。
「それ、きっと兄貴の彼女だよ。あの頃よく喧嘩の度に泣き付かれてたんだ」
まっすぐ秋良を見つめる瞳に嘘はない。だとしたらなんて勘違いをしていたのだろう。
ずっと黙っている秋良に、まだ疑っているのかと思った涼は言葉を続けた。
「信じられないなら兄貴たちに聞いてみればいいよ。最近、結婚したんだ」
「そんなっ……! 私ずっと……」
はらはらと涙が頬を伝う。その涙を涼が優しく拭った。そして――
「もう1度やり直さないか?」
溢れる涙を止められず、頷くことしか出来ない秋良を、涼が優しく笑って見つめていた。
失った時間は戻らないけど、今日からまた新しいスタートをきろう。
2人で一緒に――。