THE ４ seasons 〜WINTER snow〜-1
『忘れない――。あの日の雪を』
WINTER snow
はらはらと舞い落ちる白い雪の中、美冬は彼氏の雅臣を待っていた。
美冬の住む地域では数年に１度しか雪が降らない。今日は珍しく雪が降って来た。白く霞む道の向こうから見慣れた人が走って来る。美冬の元まで来ると膝に手をついて、息を切らせている。
「ごめん……遅くなって……」
「ううん。大丈夫」
美冬は笑って答えた。
「珍しいな、雪が降るなんて。前に降ったのっていつだっけ？」
「そうだね。久々――」
途端に美冬の瞳から涙が溢れ出す。美冬は思い出していた。あの雪の日を――。
「ど、どうしたの？」
突然泣き出した美冬に慌てる雅臣。
「ごめんね。昔のこと……思い出したんだ」
数年前、美冬は直人と付き合っていた。だけど、ささいなことから大喧嘩になってしまい、もう１週間も連絡をとらないままになっていた。
いつもよりも冷えた日のあさ、何気なくポストを覗いた美冬は１枚の紙が入っていることに気が。
「何かのちらしかなぁ」
独り言を言いながら取り出した紙を見た。
そのメモには見慣れた文字。直人からのメッセージだった。
急に転勤が決まり、すぐに出発しなければならないこと、飛行機の時間が記されていた。
そして、『もし、許してくれるなら空港に来て欲しい』という一言……。
それを見た美冬はすぐさま走り出した。この町から空港に行くには電車に乗らなければならなら。今すぐ行けばぎりぎり間に合う。
全速力で駅についた美冬はちょうど来た電車に飛び乗った。荒く息をしながら４人掛けの席に座った。ちょうど１人だったので窓際の席に座った。
息を整えて窓の外を見ると、はらはらと雪が降って来た。
「……雪？」
空から降る雪が町を白く染めてゆく。そして、美冬の心も真っ白に染まっていく。
どうして喧嘩なんてしたのだろう。どうしてあんなに冷たくしたのだろう。どうして……？
考えても答えは出ない。涙が一筋こぼれた。
その時、ガタンと音がして電車が止まった。窓の外では雪が激しくなっている。
“大雪のためしばらく停車します”
そんなアナウンスを聞いて美冬は真っ青になった。
「そんな……」
今だってギリギリ間に合うかどうかの時間。電車が止まってしまっては確実に間に合わない。美冬はただ祈ることしか出来なかった――。
白い雪が２人を引き裂いて
全てを白に染めていく――。