恋は盲目……恐怖の大魔王…………No.5-2
しかし、2人の姉上に共通していることは、俺の前ではかなり口が悪い。きっと2人の口撃には閻魔様も尻尾を巻いて逃げるのだろう……。国会で居眠りをしている議員の代わりに姉上が壇上に立てば、そのある意味鮮やかな口調で、政権を守るのも奪取するのも容易だろう………勿体無い逸材だ。
そして、趣味は弟イジメ。ストレスが溜まればもちろん弟イジメ。溜まってなくても弟イジメ。三度のご飯よりも弟イジメが好き。
正直たまったものじゃない……
「そうなんだ……あっ、今日は朝に学校でやる事があるんだった!じゃあこの辺で………」
被害を受けない為にも適当な言い訳でイジメられる前に逃げようとする。
「学校?誠、イジメられてるんじゃないの?その顔だし!てっきり引きこもりかと思ってたわ。」
早速……
「そうね、前髪を伸ばして正解だったわよ。醜い顔をさらさずに済むもの。自分が醜いって自覚するのは良いことね。」
うぅ…ヒドい言われようだ…………本当に血を分けた姉弟なのか?実は俺だけ橋の下とかで雨に濡れそぼってたんじゃないのか?
「…では行ってきます」
一刻も早く家から逃れる為、朝食は抜きである。
橘は心情を察してか朝食抜きを黙認してくれた…助かる…
「ま・こ・とー♪」
トボトボ学校への道を肩に哀愁を漂わせながら歩いていると、いきなり後ろから抱きつかれた。
「またですか白鳥先輩……」
今回は二度目なので大して驚かない。
「なーに?朝からこんなに綺麗な彼女が抱きついてるのに淡々としてるわね…」
だから何故に彼女?
確かに………むぅ……
確かに美人ではあるが…
「何か嫌な事でもあったの?」
腕に抱き付き、上目遣いで聞いてくる
シチュエーション的にはなかなかドキドキでイヤッフーな展開である………が、自分、良い年にもなってブロックを壊しまくり、器物破損罪に問われるお髭の素敵な某配管工兄弟とかじゃないんで。
「いえ………些細な事です…」
真実と真逆な事言ってるのが凄く哀れで悲しい……
「そう?あっ、それでね!今日の夜に誠を家のディナーに招待する事になったから♪」
さらりとした梅酒なみにさらりとノドン投下
「えっっ?ディナー?なんでそんなに先輩は急展開が好きなんですか?!」
「いーのいーの♪じゃあ約束だからね!それとー…やっぱりお父様に紹介するのだから髪は切った方が良いわね……」
何気ない顔で更にテポドン投下
「!!?お父様に紹介?いや、それよりも髪を切る!!?」
多分今の俺の顔色は澄み渡った空よりも青々としているだろう
「そんなに驚くことでもなくない?」
不思議そうに小首を傾げて聞いてくる白鳥先輩
「だ、ダメです!百歩譲ってディナーに行くとしても、一億歩譲っても髪は切りません!!!」
「んー…そんなに嫌ならまぁ髪は切らなくてもいいけど……じゃあ放課後に校門でね♪」
じゃぁね、と言い二年生の昇降口の方に去って行った。