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君のそばにいてあげる
【学園物 恋愛小説】

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君のそばにいてあげる(一日目)-4

「ねえ、ボク。こんなところでどうしたの? 見たところ二年の制服を着てるけど、こんな小さい子うちの学校にいたかしら? ひょっとしてコスプレ?」
「いいえ、正真正銘ここの生徒です」
俺はそう言いながら、休み時間の間に作り直された学生証を見せた。
「あらあら、本当にうちの生徒だったんだぁ。じゃあ、私達のことも知ってるわよね」
その言葉に俺はある噂を思い出した。

生徒会には冷徹な騎士と笑顔で無慈悲な魔女が存在する。

この言葉に当て嵌まる二人が俺の眼前にいる。
生徒会長であり、『学則の騎士』と呼ばれる『御剣菜々子』と『微笑みの魔女』と呼ばれる副会長の『方城院美佳』である。
「み、御剣先輩と方城院先輩っ!?」
二人は違う方向で飛び抜けた美少女なのだが、今まで耳にした彼女達が持ついくつもの逸話に俺の身体は自然に震えだす。
「まあまあ、すっかり怯えさせてしまいましたね」
「まったく……一体、私の知らないところでどんな噂が流れているのやら……」
そう言うと、御剣先輩は少し困った顔をしながら俺の頭を優しく撫でてくれた。「怖がることはない。別に私達はキミを取って食おうとしてる訳じゃない」
笑顔で話し掛ける御剣先輩はいつもとは違う飛びきりの笑顔だった。
「本当に菜々子は可愛いものが好きね」
「なっ!? 別に私は……」
「隠してもだぁめ。だって顔に出てるわよ」
照れながら頬を染める御剣先輩に対して、方城院先輩は楽しそうに彼女をからかっている。
「それよりも美作くん。腕を出してみなさい」
方城院先輩のちょっかいから逃れる為か、御剣先輩は俺の腕をとると先程擦り剥いた肘にポケットから取り出したバンソーコーを丁寧に貼ってくれる。
「……あ、ありがとう」
俺がバンソーコーのお礼を言うと、御剣先輩は嬉しそうに「良いのよ」と微笑んでくれた。
「それにしても祐二くんみたいなちっちゃい身体で購買で買い物するのは無理みたいね」
方城院先輩は笑いながら俺を見ると予想外の提案をしてきた。
「ねえ、これからわたし達と一緒に生徒会室でご飯食べない?」
俺と御剣先輩が思わぬ一言にポカンとしている内に方城院先輩は俺達の手を取り生徒会室に歩きだした。

「さあ、祐二くん、遠慮しないで食べてね」
方城院先輩はそう言いながら、自分のランチボックスからおかずを取り分けると俺の前に置いてくれた。
同様に御剣先輩もおかずを分けてくれる。
「でも、災難だったわね。お祖父さんの実験に巻き込まれて身体が小さくなってしまったなんて……」
御剣先輩が先程淹れた緑茶を飲みながら言うと、方城院先輩は笑顔で俺に質問してきた。
「祐二くんのお祖父さまって、松戸ラボの松戸博士よね?」
俺はおかずを頬張ったまま無言で頷いた。
すると方城院先輩の表情が急に緩みだし、瞳をキラキラと輝かせた。
「やはりそうだったのね。わたし、松戸博士のことを心から尊敬してるんですよ」
「ええっ!? マジですか? あんないい加減でスチャラカなマッドサイエンティストのどこに……」
俺は呆れたというか驚いたというか、無意識のうちに微妙に嫌な顔をする。
「あら、祐二くんは知らないの? 松戸博士って言えば、今はそれこそマッドサイエンティストみたいな扱いだけど、昔は世界屈指の有名な薬学研究者だったのよ。当時、不治の病と言われた幾つかの病気に対する抗体や治療の論文やレポートは今でもその手の筋では神論文として扱われてるわよ。真面目なだけじゃなくて遊び心もある博士って素敵じゃない」
その手の筋って……。
方城院先輩は一体何者なんだろう?
確かにそんな話を昔、母さんから少し聞いたことあるけど普通の学生の領分じゃないってことはその手の話に詳しくない俺でも分かるぞ。
やはりこの人は魔女かも知れない。
爺さんの功績を嬉々として語る姿はまさに神を崇める信者の様だった。


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