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君のそばにいてあげる
【学園物 恋愛小説】

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君のそばにいてあげる(二日目)-6

「ねえ、祐二。あんたひょっとして弱い?」
キッチンで料理を始めた遥奈を余所に、俺と杏子は俺の部屋でゲームをしていた。
「お前が強すぎなんだよっ……。ああっ!? なんでこんなとこで! そんなんありかっ」
「んふふっ。まだまだ修業が足らんね、祐二たん」
「たん付けすんなっ! ちっくしょー! もう一回勝負だっ!!」
負け続けた俺は自分でもむきになっているのが分かりつつも再び杏子に勝負を挑んだ。
てか、杏子のやつゲーム上手すぎだぞ。
俺の横に座っていた杏子はにやにやしながら俺の頭を撫でて無茶なことを言ってきた。
「この勝負、私が勝ったら今日の夕飯のおかず一品貰うわね。祐二が勝ったら……うーん、ありえないから杏子ちゃんのキスを進呈してあげよう」
こいつ、いきなり何を言いだすんだ!?
まあ、キス云々は置いておくとして、ここまでなめられたら負ける訳にはいかないな。
気合いを入れ直すと俺は手にしたコントローラーを握り直した。

そして夕食を作っていた遥奈が俺の部屋に来るまでの間、俺が杏子に勝つことは一度となかった。
「んふふっ。まだまだ修業が足りないね。更なる精進を重ねてまたチャレンジしてくるがよい」
杏子の尊大な態度に俺の悔しさは上乗せさせられた。
「ちっくしょー! 次こそは負けねーぞっ!! もう一回勝負だっ」
「残念だけど時間切れだよ。ほら、遥奈が後ろで待ってるから」
そう言うと杏子は立ち上がり遥奈のところへ駆け寄った。
「遥奈ぁ、今日のご飯はなぁにかにゃ〜?」
「今日はハンバーグシチューにしてみたよ。それじゃ、早く下にいこっ。ほら、ゆーくんも」
遥奈は悔しさでへこんでいた俺を抱き上げ立たせると、そのまま手を繋いで鼻歌混じりでダイニングへと歩きだした。

その後の食事では、多少遠慮をしてくれたのか、杏子は俺からハンバーグを半分だけ奪うと満足そうな顔をしていた。
「いーの? ゆーくん、それで足りる?」
「まあ、身体が小さくなったと同時に食べる量も減ったから問題ないさ。それより杏子。そんだけ食べると肥るぞ」
きれいに食べながらも、パクパクと素早く食べる杏子は俺を見るとニヤリと笑う。
「そんな心配は無用よ。私はちゃんと食べた分のカロリーはきっちり消化してるからね。それより、祐二たんはちゃんと食べないと大きくなれないでちゅよ」
ちっ。こいつもそんなことを言うかっ。
お互いに軽く憎まれ口を言いながらも笑いが絶えない夕食だった。

「ごちそうさま。はぁ〜、ほんと遥奈のご飯はいつ食べても美味しいわねぇ」
それについては俺も同意だ。
何しろ遥奈の料理は俺の母さんの直伝なので味付けは『美作家』のものだったりするから俺の舌にはちょうど良いのだ。

「おおっ、遥奈ちゃんに杏子ちゃん。来ておったのか」
俺達が食事を終えた頃、爺さんがダイニングにやってきた。
「博士、こんばんは。ご飯できてますよ」
遥奈はそう言うと席を立ち、爺さんの食事の準備を始める。
その姿を眺めながら爺さんは俺の横にある椅子に座ると杏子が話し始めた。
「ねえ博士、祐二はいつまでこのままなの? 私的にはずっとこのままでもいいかなぁって思うんだけど」
「ちょっと待てっ! 冗談じゃないぞ杏子!」
杏子の言葉に反応して立ち上がろうとした俺の頭を爺さんが押さえ付けて座らされた。
「まあ、確かにそれも面白いがそうもいかんじゃろ。それにほれ、試薬も出来ておる」
そう言うと爺さんは白衣のポケットからカプセル状の錠剤を俺に渡した。
俺は爺さんから受け取ったカプセルをテーブルに置いてあったお茶と一緒に飲み下すと、こっちに来た遥奈が残念そうな声を上げたがそれはあえて聞き流した俺だった。

因みに爺さん曰く、薬の効果が出るのは明日以降らしい。
とりあえずこの犬の耳と尻尾がなくなって、元の姿に戻れることを期待しながら今日という日の残りの時間を過ごすことにするのだった。


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