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君のそばにいてあげる
【学園物 恋愛小説】

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君のそばにいてあげる(一日目)-3

遥奈と杏子に一通りからかわれた俺は、憮然としながら教室に入ると俺達、正確には俺を見たクラスメイト達はすぐに反応し、俺を取り囲む。
「なになに、遥奈の隠し子? それとも腹違いの弟?」
「くっそー! 俺、神林のこと密かに狙ってたのに既に子供がいたなんてぇ!!」思い思いに好きなことを口走るクラスメイト達に辟易した俺は囲みを抜けて席に着こうとするが、身体が小さくなったせいか力負けして囲みを抜け出せなかった。
「てか、俺は美作だっ! 遥奈の隠し子でもなければ弟でもないっ!」
俺の言葉に教室が静まり返る。
暫くの沈黙の後、一人の女子生徒の一言がきっかけで騒ぎは更に悪化した。
「本当に美作くんなの!? いやーん、可愛いっ。ちょっと抱かせて」
「おいっ! ちょっと、やめろって……」
俺の非力な抵抗も空しく軽がると抱き上げられ抱き締められてしまう。
そして、他の女子生徒からは頬を突かれもはや好き放題だった。
「やーん、ほっぺがぷにぷにしてる。クセになりそう」
そんな俺を遥奈は不機嫌そうに、杏子は可笑しそうに見ている。
こんな調子で騒ぎが続いている間に担任が教室にやってきた。
「お前らいつまで騒いでる。もうホームルームの時間だぞ……って、そのチビはどうしたんだ? まさか、お前らの誰かが誘拐してきたんじゃないだろうな?」
女子生徒に抱き締められている俺の首根っこを掴むと担任教師である『酒井美羽子』先生は俺の顔を覗き込んだ。
因みにこの担任、生徒達に自分のことを『みわちゃん』と呼ぶことを強制してる変り者だ。
「んー……おい、おチビ。お前さんはどこの子だい?」
「おチビですみませんね。美作ですよ。みわちゃん」
みわちゃんに顔を覗き込まれた俺はやれやれといった感じで答えた。
「なんだ美作、お前だったのか。それにしてもその格好……またマッドラボの関係か?」
マッドラボってのは、俺の爺さんの研究所の通称だ。
正式な名称はちゃんとあるんだが、誰もその名称で呼ぶ奴はいない。
『松戸キッチンガーデンテストラボラトリー』
これが爺さんの研究所の正式名称だが、こんな長ったらしい名称だからみんな略して『マッドラボ』と呼んでいる。
実際、菜園なんて語っているけど、やってる事は事実マッドな研究が殆どだ。
今の俺の姿もそのせいだ。「まあ、なんて言ったら良いのか分からんが、とりあえず災難だったな」
やれやれって感じでみわちゃんが俺を降ろすと、みんなに席に着くように言った。
こんな状態の俺は急に大きくなった机や椅子に、厳密には俺が小さくなっただけだが、戸惑いながらもなんとか午前の授業を乗り切った。

そして昼休み。
俺は昼飯を買う為に購買に向かったのだが、そこで更なる試練が待っていた。
購買には既に人が押し寄せ戦場と化していた。
普段の俺ならそのまま突っ込んでいたが、今の俺では力負けして弾き飛ばされるのが目に見えている。
しかし、飯は食わないといけないので、意を決して殺気立った集団に飛び込む。
が、今の俺の身長と体重では分け入ることも出来ず、すぐに弾き飛ばされてしまった。
「いてて……。ホント、容赦ないなぁ」
購買の向かいの壁を背に座り込んで擦り剥いた肘を見ながらぼやく俺の頭上から声がする。
「どうしたの? って、キミ、怪我してるじゃない!? ちょっと待ってなさい」
その声に俺が顔を上げると、目の前にはちょっとキツそうな瞳が印象的な長い黒髪の女子生徒が覗き込んでいた。
「………………」
俺が彼女を見て惚けていると、彼女の背後から声がした。
「ほら、菜々子が睨むからこの子固まっちゃったじゃない」
菜々子と呼ばれた女子生徒の後ろから姿を現したのは軽いウェーブのかかった髪に下縁メガネをかけた、目の前にいる菜々子と同じ色の赤いネクタイをした女子生徒だった。
赤いネクタイってことは三年生なんだろう……。
そして、菜々子という名前にどこかで聞いた様な違和感を感じながら押し黙る俺に、メガネをかけた女子生徒は菜々子の抗議を無視して人を和ませる様な柔らかい笑顔で話し掛ける。


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