投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

Larme
【その他 恋愛小説】

Larmeの最初へ Larme 3 Larme 5 Larmeの最後へ

Larme-4

僕はあずさの葬式にも出ず、東京へ戻った。
あずさが死んだ日、麻梨さんの喫茶店で書き上げた楽譜をメンバーに渡し、新幹線で考えてた歌詞を哲明に渡して言った。
「哲明の喉が治り次第、レコーディングだ」僕はそう言うと、尚人と曲のアレンジをはじめた。
みんな、ただひたすら、それぞれの楽器を鳴らした。
誰も、何も言わなかった。
誰も、何も聞かなかった。

夏名も麻梨さんもわかってくれなかった僕の気持ちを、みんなは分かってくれていた。


その曲、『Larme』は、クリスマスに出すベストアルバムのボーナストラックとして、初回プレスのみに付けた。
…これが最後だった。
INNOCENCEのHIROAKIは、もうすぐ居なくなる。
もう、曲は書けない。
もう、ギターは弾けない。
もう、どうにもならない。

雪が止んだ丘の上で、僕は街を見渡した。
僕が生まれ、育った街。
僕と彼女が出逢った街。
INNOCENCEが生まれた街。
…そして、彼女が眠る街。
さまざまな思い出が溢れるこの街は、今の僕には辛すぎる。
2人で過ごした日々も、今となっては、思い出でしかない。
…失くして初めてその大切さに気付いた僕を、あずさは許してくれているのだろうか?
あずさは、どんな思いで過ごしていたのだろうか?
…僕の耳の中で、“あの日の約束”がこだまする。
『絶対、有名になる 有名になって、帰ってくる 日本中に僕達の事を知らない人がいないくらい有名になって、迎えに行く …だから、その時は一緒に暮らそう』

…約束したのに。

どこまでも続く空の下、僕は何も見えなくなっていた。


Larmeの最初へ Larme 3 Larme 5 Larmeの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前