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Larme
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Larme〜lonely liar〜-5

私はこっそり施設を抜け出し、自分の家に向かった。
鍵は開いていて、新しい畳の匂いがした。
…私とお母さんが暮らした場所とは、全く別の場所だった。
見つかってないかなぁ…
私はドキドキしながら、居間の押し入れの戸を引く。
下の段の一番奥の上…
「あった…」
小さい、小さい貯金箱。
部屋を出て中身を数える。
…2万円に、少し足りない。
きっと、行けても帰って来れない。
行ったって、見つかる訳がない。

…それでも、いい。
幸せになる、最後のチャンスかも知れない。
後悔なんて、したくない。

私は、その足でバスに駆け込んだ。
―東京に行こう。
絶対に幸せになってやるっ。


1時過ぎ
玄関のドアが開く音に、私は寝た振りをした。
哲明はそのまま寝室のベッドに倒れ込む。
「…哲明?」
返事はない。
「ねえ、哲明?そのまま寝たら、風邪ひっ…」
哲明は突然私の腕を掴み、やや強引に抱き寄せる。
肩が、小刻みに震えていた。
「一体、どうしたの?」
哲明は、ただ首を振っていた。
「はぁ…」
私はため息をつき、哲明の涙を拭った。
「泣かないの男の子でしょ?」
いくら拭っても、哲明の涙は止まらない。
私は哲明を抱きしめ、頬に小さなキスをした。

哲明は、暖かい。
哲明も、私を暖かいと思っているのかな?
私の心の冷たさに、どうか気付かないでいてね?

…あの日私は、テレビの中で幸せそうに笑う哲明を見て、心底憎いと思った。
お母さんが死んだのは、コイツらのせい
あずさが病気になったのは、コイツらのせい
私がこんなにつらいのは、コイツらのせい
みんなみんな、コイツらのせい
そう、思い込まなきゃ、誰かのせいにしなきゃ、とても生きていけなかった。
誰も悪くない。
誰のせいでもない。
…本当はわかっていた。
そんな事わかっていた。
…なのにっ
「…恵?」
一筋の涙を流した私を見て、哲明が心配そうに問う。
「なんでもない」
それでも、心配そうに私を見つける哲明を、ぎゅっと抱きしめた。
もっと、違う出逢い方をしていれば、こんなにつらくなかったのかな?

どうしよう、哲明…
どうしようもないくらい、あなたが好きだよ…
絶対に言えないけど。
メグミじゃなくて、ケイを見て欲しい。
そう言えたら、
メグミじゃなくて、ケイを愛して。
そう言えたら、どんなに幸せだろう?
そうしてもらえたら、どんなに幸せだろう?

今、私は日本のトップアーティストと暮らしている。
食べたい物をお腹いっぱい食べれるし、可愛い服も着れる。
欲しい物は何でも手に入るし、したい事も好きなだけ出来る。
それなのに、満たされないのはなぜ?
…“テレビの中で幸せそうに笑う哲明”は、作り物だとわかったから?

哲明に出逢って、哲明を知った。
常に笑い続けるのが彼の仕事。
仕事中も、…メンバーの前でさえも。
そんな哲明を騙しているのはつらい。
楽になりたい。
でも、離れたくない。

「…哲明?」
顔を上げた彼に、キスをせがんだ。
「…幸せ」
本当?
嘘?
自分でもわからない。
わからないけど、叶うなら、今、この瞬間が、永遠であって欲しい…

深い傷を舐め合い、私達は共に生きていく。
お互いを騙しながら。
…自分を騙しながら。


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