年の差-3-1
「北野、久しぶりだな」
声のする方へ振り返ってみると、高井が立っていた。
「久しぶり〜彼女とは仲良くしてんの?」
「まぁな」
照れながらも、嬉しそうだ。
結局、彼女とは別れずにいているようだ。
「待たせたな」
そこに現れたのは、前川先生だった。
「先生、お久しぶりです」
高井が頭を下げる。
私も慌てて下げる。
「そうだよな〜もう卒業して、一年だよなぁ」
しみじみするように言う。
「なんか、先生言い方がじじくさいですよ」
尽かさず、つっこむ。
「北野には言われたくない」
「何でですか?」
「口を開けば、『経済力』がなんだ、『結婚は妥協』だなんだって、言ってるような夢のないやつは、オバハンだよ」
高井が横で笑う。
「確かにそんなこと言ってたな」
高井の笑いがおさまり、横でぼそっと言う。
「だって事実じゃん〜あ、三沢さん、来ましたよ」
手を振って、居場所を知らせる。
向こうも気付いたみたいで、小走りでやってくる。
「ごめん!遅れて!」
三沢さんが申し訳なさそうに謝る。
「気にしないで下さい。じゃ行きましょか」
高井が先頭を切って、歩く。
向かう先は、居酒屋だった。
冬の寒さは和らいだものの、朝晩はまだ肌寒い。
夜を迎えるのが遅くなったとはいえ、18時になるとやはり暗かった。
今日は、元研究室メンバーでの飲み会だ。
久しぶりであるのと、会社帰りであることもあるので、いつも適当な化粧を今日は、退社前に直してきた。一応、パンツスーツ。
でも、周りはジーパンにシャツ。
先生に至っては、ノータイの白のワイシャツに、濃紺のスーツ。相変わらず、無駄のない体で、長身だ。高井と同じぐらいだと思う。
高井は、少し弛んでいるように見えるが、勉強が忙しいのだろう。
三沢さんは、相変わらずいい人オーラが出ていた。
一つ上の先輩で、分からないことがあったら何でも聞いていた。
その度に、丁寧に教えてくれて、助かったのを覚えている。
「かんぱぁい!!」
先生が威勢よく、掛け声をかける。
皆が持っているビールジョッキがぶつかる。
「仕事終わりのビールは上手い!」
先生が嬉しそうに言う。
「相変わらず、大胆っすね〜」
高井も一気飲みだ。
私も、もちろんそうだ。
お酒は強い方だと自負する。
三沢さんは、嗜むように飲んでいる。
こんな酒飲み3人と飲んでいて、大丈夫なのだろうか?
「三沢さん、お酒どれぐらい飲まれるんですか?」
「ん〜数えたことないから、分かんないなぁ〜」
ニコニコしながら、答える。
…どうゆう意味だろう?
程なくして、料理が運ばれる。
から揚げや、炒飯やだし巻き卵…
どれも居酒屋の定番メニューだ。