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「風雲鬼」
【ファンタジー 恋愛小説】

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「風雲鬼」〜第三話『暖かい夜の話』〜-2

「あなた、ほんとに巫女さん?」
ミコは慌てて答える。
「ほ、本当です! ミコは巫女です!」
「ぶはっ」
なぜか三雲が吹き出した。
「ミコは巫女です、だって。あっはっはっはっはっグフォッ!!」
三雲の後頭部に『ゴンッ!』と小さな鉄拳が炸裂した。
弾ける頭。驚いて女の子は「キャッ」と悲鳴を上げる。ミコは少し涙目で、
「名付けたのあんたでしょーが!」
 と叫んだ。
「あぁ、そうだった。すまんすまん」
三雲は頭をさすりながらも平然と謝る。
女の子は呆気に取られていたが、二人のやりとりを見ているうちに可笑しくなってきたようで、口に手を当ててクスクスと笑い出した。
ミコが突っかかる、三雲が受け流す。この流れはしばらくの間続いた。



‥‥‥ −‖:


「ふ〜ん、夏美の村はすぐ近くなのか。よかったよかった」
「うん、『なかはま村』っていうの。なんならナツの所に泊めてあげよっか?」

女の子の名前は、夏美(なつみ)といった。
一人称を名前で言う辺りも、舞と同じだった。

三人は夏美、三雲、ミコの順に泉の淵に座り、色々な話をした。

「え、泊めてもらっていいのか? あ、もしかして夏美の家って宿屋?」
「違うよ。…でもうちの村って宿屋無いし。ナツの所、空き部屋いっぱいあるからおいでよ」

夏美は三雲の方を向いてニコッと笑った。
三雲は視線を月に向けたまま、「そっかぁ」と嬉しそうに呟く。
その三雲越しに、ミコが夏美に気になる事を聞いた。

「あの、夏美…ちゃんって、歳いくつなの?」
「…いくつに見える?」
「え? えぇと…」

幼い顔立ち、舌足らず気味な声。少なくとも、ミコと同じかそれくらいだろう。
ミコも三雲も、そう思った。

「十……二かな?」
ミコが答えた。当たっていれば同じ歳だ。
「俺もそれくらいだと思う」
三雲も続いた。夏美はニッコリ笑う。正解だろうか。
そう思ったのも束の間、夏美は目の前でバツ印を作った。

「はっずれ〜〜。十四でした〜〜」
無邪気に笑う夏美。
「「 じゅうよん!?」」
次の瞬間、二人の素っ沌狂な声が同調した。
それほどに二人は大きな衝撃を受けたようだ。

「私より二つも上だ…」
「お、俺と同じなのか…」
二人そろって、まじまじと夏美の顔を見つめながら言う。
その発言から二人の歳を知った夏美は、「ふ〜ん」と頷きながら二人の顔を交互に見比べる。

「三雲くんがナツと同じなのは分かるけど、ミコちゃんは二つも下なんだね〜」
ミコが自分より歳下だとは、正直、夏美は思わなかった。

「やっぱり見えないよな。俺もどっちかと言ったら夏美の方が歳下に見えるわ」

三雲が顔を左右交互に振りながら言う。


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