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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第17章-8

「…カジマヤはお前が思うほど子供じゃない。」

言葉につまる。

「でも…私にだって…」

秘密を教えてくれないという、子供じみた怒りで話をこじれさせたくなかった。

要は…私が言いたいのは…

「どうして話せないのか位は…聞いてもいいでしょ。これでも凄く心配したの。あなたが何にも話してくれないから。」

言葉に、思った以上に棘がある。でも、言ってしまった言葉は取り消すことは出来ないし、取り消す気もなかった。少なくとも、今は。

「お前に危険が及ぶからだ。」

まっすぐに私を見返す目は、私の怒りと反比例して冷静だった。この目に見つめられて、怒る気持ちをそがれてしまうという人も居るだろうけど、今日に限ってはそのまなざしも、私の苛立ちをますます掻き立てただけだった。

「危険?」

私の声は奇妙に震えていて、そして私の声を震わせているのは、揺るぎの無い怒りだった。

「危険って言うのはね、情報も無しに何か良くないことに巻き込まれることじゃない!危険って言うのは…私が危ない目にあうかどうかじゃなくて…飃がどんな目にあったのか…どんな目にあうのか…解らないことよ…!」

飃の姿が、私の見ている前で霞んでいった。私の目を、涙が曇らせたから。

「飃…?そんなに私は信頼できない…?そんなに私、弱いかな…?」

顔を上げていられなくて、私はうつむいた。乱暴に目をこすって、何も言わずにそうしていた。

机に右手をついた格好のままの私の姿勢は、とんでもなく場違いな気がして…それでも、彼から返ってくる言葉は無くて…



そして、今に至る。



++++++++++++



さくらが居ないこの部屋の空気は、敵意を持ったように冷たくなる。

その冷たさを受け止めて尚、飃は間違ったことをしたわけではないと思っていた。飛び出したさくらの安全については手を打ってあるから安全であるとして…飃は、遣り残した仕事を片付けに向かおうと、腰を上げ…るのを、留まった。

確かに、自分はさくらに対して話していないことが多い。今まで、彼女がそのことについて―先刻まで―不平を言ったことは無かったし、自分の過去は、自分だけのものだ。それが当たり前だと飃は思っていた。

かつては。



それでもあの年端もいかぬ、か弱い娘は、飃の内包するおぞましい記憶を、深い闇を知った上で尚彼を愛した。さらに深く、強く。


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