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コンフリクト T
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コンフリクト T-3

谷口は、徐に折り畳み式のナイフを学ランの懐から取り出した。燃えたぎるような赤い裏地が覗く。
折り畳まれた刃が現れると、途端に教室内の空気が張り詰める。同時に訪れる沈黙。谷口の側に佇む部下らしき生徒の唾を飲み込む音が、全員に聞こえるようだった。
すると、谷口は刃を口に運び、その刃に獣の牙とも言える己の歯を立てた。そして谷口は、無造作にナイフの柄を持つ手を捻る。
瞬間、乾いた音が響き、ナイフの柄と刃が分かたれていた。金属の刃を根元からへし折る咬筋力に、教室内は恐怖で凍り付く。
谷口はのそりと立ち上がり、くわえていた刃を手に取った。その口は縁が持ち上がり、どこか餓えたような笑みを作っていた。

「ウチに喧嘩売って来たってか……上等」

谷口は、手に取った刃を勢い良く放った。それは直線的な軌道を描き、教師がチョークを走らせる黒板へと突き刺さる。

「のされた奴連れて来いや。そのチビ直々に殺ってやる」

笑みを湛えた口元とは対照的に、谷口の目は爛々と光る獣そのものだった。
谷口は咽せるような障気を放ちながら、悠然たる態度で教室を後にした。



翌日。

「それで手を出したんですか、頭」

翔は、飯田斎と共に帰路に着いていた。
飯田斎。彼もこの街の中高生で知らぬ者は居ない、東軍最強と称される男である。
翔と比較すれば一目瞭然、そうでなくてもその逞しい体格は一目で分かる。人目を引く青く染められた髪は流れるように綺麗に整い、眉目秀麗ながら、その顔立ちには親しみを持てる柔らかさがある。
一見穏やかな雰囲気の中でいて、しかし独特の存在感が垣間見える人物である。
飯田は、東軍を率いる白嵐高校在学の2年生であり、クラスメイトという事から、自動的に翔も白嵐高校在学であるという事になる。
翔は、その飯田に昨日の揉め事を咎められている所だった。

「悪いのは向こうだって。仕掛けて来たのだって向こうだし」

翔は心外とばかりに口を尖らせるが、飯田はお咎めのスタンスは崩さない。

「どちらが仕掛けた云々は問題ではないのです。理由どうあれ、頭が他校の生徒に手を出した事が問題なのです」

グサリと来る事を指摘され、翔はシュンと小さな身体をさらに小さくする。
飯田はキツく言うが、その表情はどこか慈愛に満ち、穏やかである。飯田は苦笑いしながら小さく溜め息を1つ、そして翔を諭す。

「頭が制裁した輩が西の者でない事を願いましょう。頭、今後軽率な行動は控えて下さい。宜しいですね?」

「分かったよ。つーか前から言ってっけど、頭ってのはやめろよ。ガラじゃねー」

翔は、いーっと口を横に引っ張り、並びの良い真っ白な歯を飯田に見せる。飯田は指先を眉間に当て、困ったように答える。


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