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コンフリクト T
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コンフリクト T-2

「ボクちゃん達ぃ、ポイ捨てはいけまちぇんねぇ〜? とっととお家帰って、ママのお乳吸いながら優しく叱ってもらいなちゃ〜い」

翔は嘲りの意を込めて舌を出し、いわゆる“べろべろばぁ〜”をして見せる。
予想し得ぬ挑発に不良達は一瞬固まるが、すぐに殺気立つのは言うまでもなく。
中心格らしき1人が、拳の関節を大袈裟に鳴らしながら、翔の目の前まで距離を詰める。
そして。

「っめんなガキがぁ!」

吐き捨てると同時に、中心格らしき1人は拳を振り上げる。事の成り行きを垣間見る疎らな通行人達から、悲鳴に似た声が漏れる。
瞬間、翔は、学生鞄を握っていた右手を開いた。
振り上げられた拳が、翔に振り下ろされる事はなかった。
不良達が見つめる中、中心格らしき1人は、その場に崩れ落ちたのだった。
呆気に取られる不良達。通行人達も、我が目を疑う。一体、何が起こったのかと。
突如訪れた静寂の中、翔は平然としていた。その右手には学生鞄が握られ、落とした形跡もない。

「ありゃりゃ。イッパツ」

翔は、謎を解く為のヒントを与えるかのように呟く。同時に、停止した映像が再生ボタンを押されて動き出した。
不良達は、混乱する頭の中、嫌でもこの事態を飲み込まねばならなかった。
彼らのような不良達は、実力差に敏感である。一度歯が立たないと分かると、干渉を避けるか、下手に出る。
不良の世界で生きる上で、それは掟に近いものだった。例え下っ端である彼らでさえ。

「や、やべぇって……」

「ヒロさん担げ! い、行くぞ!」

倒された中心格らしき1人改めヒロさんの敵を討つでもなく、残された2人は逃げの一手。1人がヒロさんを担ぎ上げ、もう1人と共に足早にその場を去っていった。
翔は、小さく溜め息を1つ。そして落ちていた煙草の吸い殻を拾い上げると、近くの灰皿に捨てた。不良達が居た場所から、2メートルと離れていない。

「ったく、こんなに近いのによ……」

通行人達から疎らに拍手が沸くが、翔はそれに応じる事なく、学生鞄を肩に担ぎ、その場を立ち去った。
当然の事をしたまで、翔が思うのはその程度であろう。
しかし、歯車は動き出す。この小さな善意は、後に待つ大きな災いを、確かに招き入れていた……



「それで? ウチのモンはそのチビに1発でのされたって訳か」

坂巻工業トップ、谷口祥。この街の中高生で、その名を知らぬ者は居ない。
この街で双璧を成す2大勢力──白嵐高校率いる東軍、坂巻工業率いる西軍。このうち、後者を纏め上げるのがこの谷口祥、その人である。
高校生離れした体躯と力、精悍な顔つきと鋭利な眼光、癖のある赤髪を後ろに流した様は、まるで百獣の王を思わせる。
谷口は、机の上に足を乗せ、ふんぞり返って部下らしき生徒の報告を制した。もう聞きたくないとばかりに。
部下らしき生徒は小さくなり、仰る通りですと頭を垂れた。
ちなみにここは3年C組の教室で、さらに言うと授業中である。
谷口の不機嫌さは誰の目にも明らかであり、これ以上の接触は危険以外の何物でもない事も、同じく明らかだった。


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