正夢〜真夏の夜の悪夢-3
「あの〜先生。ちょっと聞いてなくて……何に該当したんすか?」
『補習だ補習!まったく、二人ともギリギリで下回ってたからな。ちゃんと復習するように』
なんですと?
補習?
ホワッツ?
『ちなみに日程は今日の午後から……』
「な……」
『ん?』
「なんだとおおおおぉっっっ!!??」
馬鹿な……俺の夏休みライフが……。
『あは、あははは、海が、海が見える……』
もはや渉は幻覚症状まで現れているようだ。その気持ちは痛いほどわかる。何故なら俺にも海が見えているから……。
『あ〜、よし!これから名前順に成績表を渡す。貰ったものは帰ってよし、高山!高槻!お前たちはこの後化学室に来い。まずは化学と物理からだ!』
これか…これだったのか……恐ろしいものは。
離れた席から恵と珊瑚(さんご)の憐れみを含んだ視線が来たが、今の俺に反応する力は無かった……。
数時間みっちり絞られ、日も傾き始めた頃にようやく俺達は解放された。
『くっ……もっと気合いを入れておくべきだった』
「言うな」
試験前にもきちんと恵と珊瑚を交えて四人で勉強したのだが、明らかに俺と渉は気が抜けていた。まさかそのツケが今になってくるとは……。
愚痴をこぼしながら校門を出ようとした時、前方に見慣れた後ろ姿を見つけた。
「お〜い、鹿見(しかみ)!」
『ん……センパイ達』
気だるそうに振り向いたのは、後輩の鹿見だった。
話を聞くと、やはりこいつも補習組らしい。しかも、彼女のエルナちゃんはセーフで、クラスでは自分一人だけという、ある意味拷問を味わっていたらしい。
『最悪ですよ……』
鹿見の一言は俺達にも響く。俺たちは誰からともなく肩を組み、「友よ!」と叫びあった。
三人で帰っていると、渉の携帯に珊瑚から電話がかかってきた。しばらく話込み、電話を切る。すると、渉から思いがけない言葉が出た。