狂人達の宴-8
「イタッ、イタタタッ!イタッ!」
針のように刺さる柊に苦痛の声を挙げながら、なんとか中に入った春樹。
そこは体育館のとなりにあるプールの前だった。
「こっちよ」
ルミがプールの入口門の前で春樹を呼び寄せる。
「ここって……」
暗闇の中でルミは笑いながら、
「私ね。時々、ここで泳ぐの。今日みたいな月明かりの日に」
「で、でも、誰か来るんじゃ……」
ルミは首を横に振りながら、
「ここは警備員が夜8時と12時に見廻りに来るだけなの。だから、しばらく誰も来ないの」
そう言うと、入口門を閉める南京錠のカギをポケットから取り出した。
「ここの錠って昔のだから、共通番号なら合いカギなんていくらでも作れるのよ」
そう言うと南京錠を開けて、門を少しだけ開くと中に入った。春樹もその後をついていく。
月明かりに照らされたプールは、囲まれたコンクリートが青白く浮かびあがり、真っ暗な水辺がキラキラと反射して何とも幻想的に思える。
ルミは背中のバック・パックを下に置くと、服を脱ぎ始めた。
それを見た春樹は驚きの表情で、
「な、何を…!」
ルミは、さも当然と言った表情で、
「何をって、決まってるじゃない」
ルミが服を脱ぎ捨てると、下にはスクール水着を着けていた。
ネイビーの水着に映る身体のシルエットと、白い肌のコントラストに春樹は興奮を覚えた。
ルミはプール・サイドに立つと、勢いよく中に飛び込んだ。
(ああ、入っちゃった……)
春樹はルミの飛び込んだ辺りを眺めていると、突然、目の前の水辺が盛り上がった。
「ぷはぁーーっ!!」
ルミは春樹の前に現れると、濡れた髪をかき上げながら、
「早くハルちゃんもおいでよ」
「で、でも、ボク水着も無いし」
「そんなの裸で泳げば?」
「え!え!」
ルミは笑いながら、
「この暗いプールの中じゃ見えやしないよぉ。ホラッ」
「だけど……恥ずかしい」
「何、言ってんの!誰も見て無いじゃない。ホラッ!早く」
ルミに何度も促されて、ようやく春樹は服を脱ぎ出した。
そして、最後の一枚をとると、そろそろとプールに入っていった。
(つ、冷たい……)
外気は蒸すような熱気が漂っているが、久しぶりに水に浸かるためか春樹には冷たく感じた。