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「とある日の保健室」
【学園物 恋愛小説】

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「とある日の保健室その3」-1

「……!」
嫌な夢を見た。
保健室のベッドから飛び起きる。
(良かった……夢で)
最悪な過去。
出来れば2度と思い出したくない、血塗れの景色。
未だ消えない頭の傷が疼いた。
「竹下……か」
彼女の顔が浮かんだ。その表情は暗い。そしておそらくは、俺も。
あのあと、誰かが俺を見つけてくれたらしく、救急車を呼んでくれた。当然の事ながら、奴等の姿はなかったが、俺は誰にも言っていない。
俺をこんなにした犯人は、奴等であると。
怖くなった。
次は殺される。
そう考えると、よりいっそう。
命あってこそのものだねだ。俺の心に永遠に封印する事にした。
(いまさらこんな夢を見るなんて……あの星野優花のはやとちりから始まったいじめが、そうとう効いてるのか……)
思い出したくない。
もう嫌だ。
これはトラウマなのだ。
身体が震えてきやがった。
落ち着け、俺。所詮は夢、過去だ。最早、あれは終わった。これからは注意すればあんな事は防げる。そう、未然に。
「橘君」
「な!……んでしょう、双葉先生」
緊張していた為か、出だしがおかしくなった。
怪訝な顔で、双葉先生は俺を見ている。
「うなされてたけど……大丈夫?」
心配してくれているのか。ちょっと、いやかなり嬉しい。俺なんかの事を……。
「大丈夫ですよ。怖い夢を見ただけです。心配いりません」
「大丈夫ならいいけど……困った事があったら、いつでも相談してね。私は橘君の味方だから」
先生の言葉は、俺の胸を一杯にしてくれた。優しい、その言葉。
味方か……あの残りの中学生活を不登校にならずに過ごせたのは、味方、黒田のおかげだもんな。味方はいいものだ。あいつはクラス中を敵にまわしてまで、俺の味方でいてくれた。進んだ高校は違うが、その交流が途絶える事はない。
「さて……それじゃ、橘君は教室に帰りなさい。今、昼休みだからね」
うわ、もう昼休みか。やはり寝ているのと起きているのとでは、時間の感じ方が違うな。
「んじゃ、また昼休み後に」
「もう……しょうがない生徒君ねぇ……」



しばらく歩くと、空が見えた。3階の渡り廊下、ここは天井がガラス張りになっている。特に意味はないらしいが。
見れば太陽は高く昇っており、眩しい日差しが俺を射していた。
さて、どうするか……教室にでも行くか。腹は減ってねえし、昼はいらねえ。適当に時間潰して、保健室に行こう。
「あ、橘だぜ」
「おう、変態」
「いや、あれは誤解だって話だが?」
「にしてもよ、誤解とかそれ以前に、お前授業出ろよ」
あー……クラスの男子諸君、俺の方を見ながら言いたい事を言いまくらないでくれ。大変不愉快だ。


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