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「とある日の保健室」
【学園物 恋愛小説】

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「とある日の保健室その3」-2

「授業には……気が向いたら出る」
「お前、不真面目だな……」
「好きに言え。俺は自由が好きなんだ。授業に自由など存在するものか。授業という名の拘束じゃねえか」
「ただサボりたい理由に、けったいな言葉を使うな」
と、その時、
「おい、橘」
我が2年2組のクラスメイトの1人である男子が俺を呼んだ。俺はそちらに行く。
「なんだよ」
「こちら、お客さん」
そう言って、そいつは自分の席に向かった。にやけ面である。
「お客さん?」
そこに立っていたのは、
「達也、あんた昼ご飯は?」
優花であった……いや、何故に俺のクラスに?
「なにしに来たんだ、優花」
「なに?その冷たい言い方は?あの事、言いふらしても私は困らないんだけど」
あの事……こいつのはやとちりした強姦事件の事か。
だいたいがはやとちりな為に、それは真実ではないのだが、こいつが言えば、うちのクラスの連中は全員信じるだろう。一時、変な噂が広がったんだからな。また広められては堪らん。
ここはぐっとこらえよう……。
「悪うございました……一体、どのようなご用件で?」
「だから、昼ご飯は食べたの?」
「いや、まだだ」
「じゃあ、はい」
優花は俺になにかを差し出した。布で丁寧に包まれている。
「なんだ、これ」
「お弁当。私が作ったの」
はい……?
「作ったから、なんだよ」
「食べて」
「何故」
「て言うか、一緒に食べよ」
「だから何故」
「もぉ、なにか不満なの?」
「だから、何故に俺がお前の作った弁当をお前と一緒に食べねばならんのだ!」
少し声を荒げた。 とは言っても、大したもんじゃないが。
「……いいのよ、あの事を言いふらしても?」
「ぐっ!」
そのネタで俺を揺するとは……!
なんて奴だ!
だが、これ以上抵抗するのは無意味だ。おとなしく従うしかなさそうだ。
「分かったよ……」
「よろしい。校舎裏に行くわよ」
「校舎裏?」
なんだってそんなところに?あそこは生徒が寄り付かないランキング第1位だぞ。俺ですら行った事がないと言うのに。
「さっさと来る!」
「へいへい……」
教室を出る。かな〜りだるそうに。
(何故俺なんかを誘うんだ?あいつは俺の事を……強姦魔だと思っているよな。イコール嫌い。なのに何故?……いや、こうは考えられないか?あいつが俺を陥れようとしている、とか。例えば……弁当になにかを入れていて、それを使って俺を退学にする……とかな。ううむ……考えすぎか?いやいや、警戒を忘れてはいけない……)
そんな事を考えていると、気付けば校舎裏にいた。校舎の影がそれにかかっている。何故か配置されている、テーブルとイスに。
「なんでこんなところに……」
「教えてあげよっか?」
優花が得意気に胸を張った。
別に知ったところでどうなるわけではないし、訊く気すらなかったのに、こいつは語り出した。
「ここはね、カップルたちがよく利用する、言わばデートスポットなの。学校じゃ人目が……でも学校だからこそイチャつきたい……そう思った奴がいたみたいでね、ここに――校舎裏なら誰も来ないからね――設置する事にしたらしいの。……とは言っても、今この存在を知っているのは、生徒でも極少数。教師はよく知ってるけど。昔に利用した事、あるみたい」
そこまで言って、優花は押し黙った。どうやら一息吐いているようだ。
俺に疑問が浮かんだ。訊いてみる事にしよう。
「なあ……そんなところに、何故に俺を連れてきたんだ?」
「え!……っとぉ、それは……」
明らかに狼狽している。うろたえている。動揺している。


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