続・夜の学校-9
「しまった逃げられたか」
守衛が後ろからやって来て言った。
「追いかけましょう」
「おう」
俺はパンチをくらった腹を押さえながらも出せる力を振り絞って精一杯走った。
が、しかし犯人は足が速く、どんどん距離が引き離されていく
そして犯人が廊下を渡りきり、階段のところにさしかかったその時、
「なんだ?」
階段の上から突然男の上に黒い人影が覆いかぶさった。そのまま男と人影は地面に転がり込んだ。一体だれなのか暗くてよく見えん。
「早く、お前も参戦しろ。こいつなかなか力がつええ」
取っ組み合っている一人が言った。その声は意外なことに。近藤のものだった。
「近藤!? 近藤なのか?」
「そのとおりだ。助太刀に参った。さっさと手伝え」
「おう。よっしゃ」
俺も男を再び取り押さえる。
「こいつ、もう逃げられないぞ」
近藤は後ろから、俺は前から男を動けなくする。するとようやく守衛のおじさんが追いついた。そして最後は守衛のおじさんが捕まえ、男は御用となったのだった。
ことがすんだ後、守衛のおじさんは男を警察に連れて行くために、俺たちと別れることになった。
「やあ、なんとか泥棒を捕まえたみたいだね」
階段の上から生活委員顧問の伊藤が降りてきた。なんと彼も近藤についてきたのだった。
「伊藤先生も来てたんですか」
「それにしてもなんでアンタがここに来るのよ。まあおかげで泥棒を捕まえられたから良かったけど」
委員長が近藤のほうを向きながらそういうと、近藤は得意そうに笑いながら、
「へっへっへ、俺は行かないとは一言も言ってねえぜ」
「確かにそうだな。近藤がいなければ捕まえられなかったかもしれないし、委員長も許してやれよ」と俺は委員長をたしなめるように言った。
「ま、まあ助かったわ。ありがとう。あと、昼のときは少しやりすぎたわ。ごめんなさい」
委員長がぺこりと近藤に頭を下げた。めずらしいことだな。
「いいよいいよ気にすんな。まだ少し痛むけど、もとはといえば俺が騒いだのが悪かったしな」
近藤は少し照れ笑いしながらそう言った。ううむ。実にいいことだなあ。
やがて守衛のおじさんが警察から戻ってきた。
「いや、君たち学校を守ってくれてありがとな。あの男は空き巣の常習犯で、以前からこの学校に目をつけていたらしい。こんなことがもう起きないように、一刻も早く鍵を直さなければならないなあ」
「…あの守衛さん、ついでにトイレの鍵も壊れているかどうか確かめてもらえないでしょうか」
伊藤がすまなそうにそういうと、クスクスと笑い声が聞こえた。
そして長い夜が明けた次の日―――今日も朝から夏らしい快晴の空だぜ。
今日は生活委員の定期ミーティングがある日だ。家に帰ったのが深夜の2時ぐらいでかなり眠い。それに昨日の夜は走ったり男と格闘したりと、かなりハードな夏の一夜だったからな。体もだるく、坂を登るのがきつい。そんな俺に反して、相変わらずセミの鳴く声はやむことがない。元気なセミどもだ。
学校につき、ミーティングをやる予定の教室に行くと、意外なことに顧問の伊藤がいた。あの幽霊顧問の伊藤が二日続けて生活委員に顔を出したのだ。