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夜の学校
【ミステリー その他小説】

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夜の学校-1

季節は夏。 
もうすぐ俺の学校は夏休みの長期休暇にはいるのだ。生徒全員が学校そのものから解放され、この多大なる休暇を一斉に謳歌する夏休み。ああいい響きだ、夏休み。
しかしそんな楽しみが迫っているというのに、生活委員の俺は夏休みが始まる前の教室の大掃除をやらされていた。なぜこんな時期に大掃除という意味のわからないことをやるのか俺にはさっぱりわからない。結局掃除しても夏休みにはどうせ使われないのだから学期が始まる前にやればいいではないか、と思う。
だが生活委員の伝統を重んじる委員長は、強烈なファシズムを強いて下っ端
俺たちを支配しているので、誰一人として決して奴には逆らえなかった。
「まったくもうすぐ夏休みが始まるってのに…」
友達、いや悪友である近藤がホウキ片手に俺に話しかけた。彼もこの掃除には気が進まないそうで、とてもだるそうに掃除をしていた。
「ああ、生活委員ってのも意外と損な役かもな」
と俺が返すと、
「……そうだ。今思い出したけどお前、学校の怪事件を知ってるか?」
急に近藤は突然神妙な顔つきになって妙なことを言った。
「怪事件? なんだそりゃ」
「深夜に学校をうろついている奴がいるんだ。警備員がそいつを発見して声をかけたらあわてて逃げてしまったそうだぜ?」
「……」
一体誰なんだ? そもそも何のために夜の学校なんかをうろつくんだ? 考えれば考えるほどわけのわからない話だな。作り話だったらよくあるありきたりな話で済ませそうだが実際にあった話といわれると意味のわからない話である。俺はしばらく呆気にとられていた。
そんな俺の様子をみた近藤はニヤリと笑いかけ、
「どうやら何もいえないようだな。そこでどうだ? 俺たちで調査をしないか?」
「調査?」
「深夜、俺たちが学校に行き、そいつを捕まえてうろつく理由を直接聞き出すんだ。ひょっとするととんでもない理由かもしれないぜ?」
そんな近藤の口調は非常に期待に満ちていたものだった。
「学校をうろつくのにとんでもない理由なんてあるかよ。そいつが変な趣味を持ってるだけとかじゃねえの?」
「お前はユーモアがない奴だなぁ。夜の学校探索なんて、いかにも夏らしいじゃないかよ」
「夜の学校ねえ……」
俺は少し想像してみた。夜の学校っていうと数年前に流行った怪談話を思い出すな。トイレの花子さんだとか…音楽室の幽霊だとか…。当然のことながら俺は信じていないけどな。
「どうだ? 面白そうだろ? よし、決まった。早速今夜学校に突撃する!」 
「お、おい勝手にきめるなよ!」
とそのとき、生活委員長の奴が、
「ちょっと、アンタたち! そこでなにさぼってるのよ!」
と掃除そっちのけで話していた俺たちを一括した。我が生活委員会のファシズムにおける最強の台頭者であり、教師顔負けのすごい女である。
「げっ、まずい! 話はあとだ」
そういって近藤はそそくさと別のほうに行ってしまった
そして深夜、二人で学校に忍び込むことが決まってしまった、というよりむしろ決められてしまった。



その日の夜―――時刻は午後十時ごろだろうか。俺と近藤は学校の正門の前に集合した。真夏の空は暗くなっており、いくつもの星が輝いて、月も出ていて、それらから放たれた光が学校全体を包みこむように照らしていた。雲ひとつないらしいな、実に穏やかな夜だ。校舎には誰もいなさそうで、よく怪談話とかで見るよう な、化け物がでそうな雰囲気はまったくなかった。むしろ昼の喧騒から離れた校舎は、少し幻想的でロマンチックな雰囲気を出していたと言える。
まあそんなことはどうでもいい。今の俺にとってはな。


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