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夜の学校
【ミステリー その他小説】

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続・夜の学校-3

そして今やっている罰掃除だが、これは委員長の独断と偏見により不真面目だと判断されたものは、次の日に呼び出されて個別にやらされる物なのだ。もちろんどんな事情があっても断るすべはない。
「ああ、太陽がまぶしいなあ。まったくなんでこんな日に…」
 委員長がしばらく出て行ったのを見計らって、近藤が俺にぼやいた。
「うむ、仕方のないことだ近藤」 
まったくそうとしか言いようがない。しかし近藤のいうとおり窓の外は快晴の天気で、海にでも繰り出したくなるほどの陽気さだった。今頃海にいっているヤツもいるのだろう。いいなあ。
 多分ここの掃除が終わったら他の教室の掃除もやらされる、正午までに終わりそうにないな。 俺たちの唯一の救いは夏休み中も各教室にクーラーがついていることぐらいだ。
そんな欝気分になりながら掃除を続けていると、教室に大男がふらりと入ってきた。
「やあ、こんな休みの日にご苦労様」
 生活委員顧問の教師である伊藤だ。昨夜、とある事情で夜の学校の女子トイレに閉じ込められてしまったあわれな教師である。
「先生。この委員会に顔出すの久しぶりですね」
 俺がそう言うと伊藤は、なぜか少し照れ顔になりながら、
「はは、それを言われるとつらいんだがね。期末テストの採点をするためにきたんだが、ついでにと思って」
 ついでに…か。気楽な人だ。まあそういうところがいいんだけどな。
伊藤は机においてあった生活委員の名簿を見て、
「あれ? 春にはもっと部員がいたような気がするが」と言った。
「今年入ってきた部員の半分は、先生がいない間にゴースト化しました」
 近藤がにやにやしながら言った。
「そうか。それは仕方ないな」
「ま、委員長が委員長なだけにごくごく自然な現象ですけどね」
「ははは」
 伊藤が弱々しげに笑う。
「それより君たち、昨夜のことは…わかってるね」
「ああ、昨日の夜、先生が女子トイレに間違えて入り、そのまま鍵が壊れて外に出られなくなったことですね? わかりました。約束は守ります」 
「そうそうって…わざわざ言わんでいい!」
 近藤は相変わずにやにやしていた。なかなか意地悪なやつだな。
「ところで、今日委員長が来てるんですけど」
「何? 君たち二人だけじゃないのか」
 伊藤の態度が少し変わった。
「さっき教室を出たばかりですよ。あ、もう戻ってた。ほらほら、噂をすればなんとやら」
 近藤が振り向きながらそういったので後ろを振り向くと、委員長が無表情でそこにいた。もう帰って来ていたのか。 
「伊藤先生。これはこれは久しぶりですね。本当に久しぶりね」
委員長がそばにいた伊藤に一瞥して言った。語尾を強くして言った。凄い迫力だな。
伊藤の顔が一瞬引きつった。恐怖の時間が始まったぜ
 実は伊藤の最大の天敵はこの生活委員長であるのだ。時々顔を出すたびに委員長にイヤミを言われ続けている。もちろん彼は反論できない。現在の伊藤は幽霊部員ならぬ、幽霊顧問だからな。
 委員長が就任して新体制が整った後、委員長の奴は顧問である伊藤の態度にも口を出し始めやがった。
そんでもって伊藤の方も今までの生活委員のだらけた素行を見逃していた行為を、学校側にチクられたくなかったので下手に委員長に逆らえずに従うしかなくなったのだ。しかも学校から任せられている顧問だから学校の制度で、委員と同じで辞めることもできない。まさに生き地獄、まったくあわれな教師だぜ。


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