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夜の学校
【ミステリー その他小説】

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続・夜の学校-4

「いやあ、まったく久しぶりだね。君は最近よく生活委員の仕事をしてくれるから私の鼻も高いよ」
 伊藤がはっはっはー、ととぼけたふりをする。悪あがきは無駄だと思うけどな。
そして生活委員長はそうやって無理やり笑顔を作る伊藤を、目を細めてにらみながら、
「委員長として当然のことです。それより先生のほうは最近委員会のほうにいらっしゃらないようだけど、それは先生のお仕事が忙しいからかしら?」
 なんてキツイ一言だ。
こんな生徒を持った教師の不幸を呪うしかない。ちなみに伊藤教師は今年専任としてどこのクラスも持っていないのでけっこう自由な時間が多い。
「まあまあ、先生は一回でも委員会に来てくれたんだから、まったく出席しないゴースト達よりはるかにましだよ。それにせっかく来てくれたところを責めることねえじゃねえか」
 と近藤が見事にフォロー。
「そのとおり。実は昨日も生活委員顧問として見回りを」
 伊藤もノリノリでそのフォローに乗っかる
「ああ、それで昨夜学校のトイレに…じゃなくてえーっと」
 しまった。
思わず口がすべった。
「昨夜? 昨夜あなたたち学校にいたのかしら?」
「いや、実は昨夜―――」
 伊藤が言葉をつまらせる。
すまん先生。なんとか危機から脱出してくれ。
「俺が言うよ。実は昨夜、学校の怪談話がテレビでやってて女子トイレの特集をしていたんだ。それで三人で怪談話で盛り上がっていたんだよ」
 近藤が早口で話を作り上げた。
さすがは近藤。一瞬お前のことを尊敬したぜ。
しかし、
「それ、うそね」
 とあっさり撃沈される。なかなか鋭い女だ。
「昨夜、もしかして例の噂のことで学校にいたの?」
 もう学校にいたとバレバレのようだな。
「例の噂だって?」
 と俺が委員長に聞く。
「近ごろ、夜に学校を歩きまわっている者がいるって噂。生活風紀を乱すものとして私が調べようとしてたんだけど」 
そういえば昨日そんな話を聞いたような気がする。それが原因で夜の学校に繰り出したんだけど、結局近藤と幽霊騒ぎをしてすっかり忘れてしまっていたぜ。
「生活委員として見回りをしなければならないわ。あなた、今夜学校の警備にするから、私と校門の前に集合して。わかった?」
「ちょっと待った最初俺たち二人で行こうとしたんだぜ」
 近藤が突っかかる。当然だ。俺たちは今日も行こうとしたんだからな。          
「そうだよ委員長、学校の探索ツアーには先に予約が入ってるぜ。悪いが先着順だ」       
さらに俺もきっぱりと委員長に言いきった。ここはしっかりとせねば。
 しかし委員長は動じない。
「これは遊びじゃない。生活委員としての活動よ。それに近藤くん、あなたがいるとやたら騒いでなんでもお楽しみイベントになっちゃうでしょう。これはタダごとじゃないわ」
 む。さすがは委員長、近藤という人間を見抜いている。
「ウソつけ! いつ俺が騒いだよ」
「普段の行いね。掃除中いつも一番騒いでるのあなたじゃない」
「そんなの証拠になるかよ! 俺は行くからな」
 おお、なんというすさまじい怒りぶり。彼がどんだけ夜の学校に思いをはせていたかがわかる。
「だから来ちゃ駄目よ」
「なんでだよ! つーかなんでテメーに指図されなきゃなんねーんだよ つーかテメー乳でけーからって調子に乗って―――(明らかに下ネタが含まれているので以下略)」
 近藤がギャーギャーわめき始めた。ダダをこねる子供のようだ。
「ちょっと近藤落ち着け」
「止めるなー。これ以上コイツの思い通りに俺たちがなるかってんだ。だいたい委員長、テメーはいつもいつも上から指図ばかりしやがって! だから新入生がみんなやめてくんだよ。この○○○! チクチョウ! この―――(明らかに不快な発言が含まれているので以下略)」
 近藤はなおもわめきつづけ、いままでたまりたまったウップンをはらすため、毒舌を委員長に吐き散らした。よくもまあこんな悪口、プラス放送禁止用語がドンドコでてくるな。
 あ?
 ヤバイ、委員長から恐ろしい殺気が感じられた。


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