シスコン『第九章』-4
「…ほんとにどうしたの?秋冬、珍しく焦ってる。」
「焦ってる?」
「うん。今あんた余裕無いでしょ?」
秋冬は否定できなかった。
「心配しなくても、言わないよ。それより!悩んだら相談する事!あんたは頭良いからすぐに解決できるかもしれないけど、その答えはみんなにとっての正解とは限らないよ?」
秋冬は微笑んだ。
「姉貴に諭されるとはな。」
秋冬は春夏の肩に頭を置いた。
「オレはこれっぽっちもいいところが無い。いつだって悩んで、悔やんで、今だって…。」
春夏は秋冬の頭を優しく撫でる。
「四世春夏が姉だって事、心の底から運命を憎んでる。だけど、姉貴に感謝もしてるんだ。」
「あんたは意外と弱いから。」
秋冬は思った。
自分の姉は、誰よりも自分を理解してくれていると。
「『赤沢』がいなくなってから、秋冬は一人になっちゃったから。」
「赤沢か、懐かしいな。」
秋冬は思い出す。
「転校しちまったっけな。一番、仲が良かった。あいつ、姉貴の事好きだったんだぜ?」
「え?そうなの?」
「やっぱ姉貴は鈍感だな。」
秋冬は笑った。
そして、春夏から離れた。
「ありがと。」
「肩くらいならいつだって貸してやるわよ。」
秋冬は困り顔で微笑んだ。
「強いな、姉貴は。」
秋冬はリビングを出た。春夏はクッションを抱えた。
「…はぁ。」
目は空ろだ。
翌日 学校
「秋冬君、話があるんだ。」
千里が朝イチから、秋冬に神妙な顔で言った。
秋冬は、きたかと思った。
「丁度良かった。オレも、話があるんだ。」
二人は教室から出た。
「実は、僕が北川先輩と付き合ってた事、白鳥が知ってるんだ。」
「…そっか。オレもその事なんだが…、白鳥は姉貴にも話したそうだ。北川先輩って事は言ってないっぽいけど。」
千里は思考する。
「あのさ、」
秋冬が口を開いた。
「オレを、疑ってねぇのか?」
「え?なんで?」
秋冬は千里の答えに、呆気にとられた。
「いや、だって…、」
「秋冬君は、そんな事しないよ。」
ほんのちょっと、秋冬は泣きそうになった。
「柚木さんに、話しちゃおうか。」
千里が言った。
「そうだよな。変に隠すよりはな…。」
「ま、頃合を見てだね。」
「だな。」
「おはよ。」
そこにきたのは、梓と優魅だった。
「おはよ。」
「おはよー。朝から険しい顔してどうしたの…?」
梓が心配そうに言った。秋冬と千里は一緒に手を振った。
「別になんでもないよ。」
「あんまり気にしなくてもいいさ。」
二人は教室に入った。
「…やっぱり変だよね。」
梓が言う。優魅は同意した。
「隠し事かな…。知りたくなるよね。」
二人は顔を見合わせて、ニヤリと笑った。