シスコン『第八章』-8
「秋冬君!浜崎さんに電話して、学校にきてほしい旨を伝えるのだ!!!」
「えぇ〜〜っ!?」
「そしてあわよくば男女交際よ秋冬!!!」
「でぇ〜っっ!!!???」
秋冬は立ち上がる。
「ふざけるな!オレの気持ちわかってんのか!?」
千里は秋冬の肩に手をのせる。
「大マジだよ、秋冬君。もうすぐ文化祭だし、この楽しい行事に参加しないのはもったいないよ。」
秋冬は頬をかく。
「ま、まぁそうだろうけどよ…、」
春夏はペンを秋冬に渡した。
「頑張りなさい。」
「姉貴!!!」
春夏は笑う。そして、秋冬に悪魔の囁きをする。春夏は秋冬の耳に口を近付け…、
「浜崎優魅を学校に連れてこれたら、キスしてあげる。」
「えっ?」
秋冬の顔が赤くなる。
「いつものポーカーフェイスはどうしたの?」
春夏はそう言うと、ニカリと笑った。
「ちっ…そんな手には乗らねぇよ。」
「ほっぺじゃなくて、口にキスしてあげる。」
「なっ…!!!」
情けなくも、秋冬の心は揺れていた。
「決まりだね。」
千里が言う。
「そうね、帰ろう!」
春夏と千里は意気揚々と部室を出た。
秋冬は取り残された。
「おいちょっと………おい!」
もちろん返答がある筈も無く。
「…キスか…。」
そうつぶやいて、秋冬は首をブンブンと振った。四世秋冬も、男の子なのだ。
「優魅!ご飯は!?」
「いらない…。」
優魅は自分の部屋のベッドに体育座りで座っていた。
「…あ…きと…く……、」
優魅をここまで傷つけたのは、なんだろうか。
ふと、優魅は携帯電話を見た。
その瞬間、携帯電話のバイブレーションが勢いよく震えた。
優魅はパカッと携帯電話を開く。
「…秋冬君…!」
優魅は電話に出た。
「もしもし…!」
その数分前
秋冬は自分の部屋のベッドに体育座りで座っていた。偶然、優魅と同じ格好だ。
「別に、姉貴にキスしてもらいたいわけじゃねぇ…。」
別に誰も聞いていないのに、そう言わずにいられなかった。
「そりゃ、オレだって浜崎さんの事心配だよ。浜崎さんが好きって思ってくれる事、うれしいよ。だけど…、」
春夏以上に好きになれないのだ。
「…畜生。オレの糞野郎。」
秋冬は携帯電話を見る。画面には、浜崎優魅という名前と、電話番号。
「…かけよう。話は、それからだ。」
通話ボタンを押す。