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シスコン
【コメディ 恋愛小説】

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シスコン『第八章』-9

『…もしもし。…わかる?』
「…うん。秋冬君。」
電話の向こうの秋冬は、一つ咳をした。
『あ…あのさ、クラス違うから知らなかったんだけど、学校…休んでるんだって…?』
「…うん。」
『…なんで?』
わかってるくせに、とは、言えない。とても。
「…ちょっと、ね。」
『…そっか。』
深くまで聞かない秋冬を優しいとも思うし、残酷だとも思う。
『文化祭とかあるからさ、…おいでよ。』
いつもの秋冬君じゃない。
そう、優魅は思った。
「誰に頼まれたの?」
可愛くない言葉だと、わかってる。
『…柚木さん、それと、千里。あと…姉貴。』
「春夏ちゃんの為?」
『違う。』
秋冬の声は、しっかりしていた。
「…学校、行く。」
『本当?』
「うん。秋冬君の顔、たててあげる。」
秋冬が困った顔をしているのが目に浮かび、優魅はちょっとだけ笑顔になった。
『…うれしいよ。』
「うん、でも条件があるの。」
優魅は、勝負に出る。
『…なに?』
「文化祭、一緒に学校回って?」
これを、最後のチャンスにしようと。





秋冬は電話を切った。
「…ふぅ。」
優魅の条件をのんで、なんとか学校にきてくれる事になった。
秋冬は、人一倍他人の感情の変化に敏感だ。それは、数年前の出来事が原因なのだ。そして、その変化は電話口でもわかる。
「浜崎さん、思い詰めてたな…。」
人の顔色を伺って、自分を偽り続けた罰が、叶わない恋に気付いた事だと思っている。
文化祭はもうすぐだ。





優魅が学校にきた。梓は秋冬には特に何も言わなかった。
「これでいいんだろ?千里?」
「ご苦労様。これご褒美ね。」
千里は秋冬に購買で売っている百円ジュースを渡した。
「どーも。」
そのジュースが使った電話代よりも安いのは内緒。
秋冬は放課後に春夏と千里に部室に呼び出された。
「なんだよ。」
「ちゃんと浜崎優魅は学校にきたみたいね。」
「あぁ、説得したからな。」
春夏は満足そうにうなずく。
「よし、お姉ちゃんがご褒美をあげよう!」
「…あ?」
「目ぇ、閉じて。」
秋冬は困惑する。
「姉貴…なに考えてんだ!?」
「目ぇ閉じろ!」
秋冬はびっくりして、ギュッと目を閉じた。
春夏は秋冬の髪の毛を鷲掴みにした。そして、自分に引き寄せる。
「なにをっ……!!??」
秋冬はわかった。自分の唇に触れているものに。何秒かして、春夏は顔を離した。
「ご苦労だったね。」
秋冬は目を開ける。
「…な…!」
「2回目だね、秋冬…?」
秋冬は顔を真っ赤にして、走り去った。
「あははっ!面白いなぁ…!!」
春夏は腹を抱えて笑った。
「ちょ…ちょっとドキッとしたよ…。」
千里まで顔を赤くしている。
「秋冬君…帰っちゃったね。」
「どーせ秋冬がいたって変わらないわよ。文化祭の司会なんて、拒否するだろうから。今のうちに決定しとこ。」
「…悪魔だ。」
「なんか言った?」
「なにも。」





「あの超絶糞馬鹿姉貴が…。」
秋冬は下駄箱の前に座っていた。
「…四世君?」
「んあっ?」
そこにいたのは、北川だった。


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