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シスコン
【コメディ 恋愛小説】

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シスコン『第八章』-6

「まだ、千里の事好きなんですか?」
北川がうなずく。
「…そうね、むしろ愛してるわ。」
秋冬は驚いたが、極力顔には出さない。
「なにをそんなに驚いてるの?」
秋冬はちょっと困ったような顔をした。
「頭も切れて人の心が読めるってのは反則ですよ?」
秋冬は立ち上がる。
「さ、そろそろ授業に行かないと。」
「そうね。なんて言い訳しようかしら。」
二人は生徒会室を出た。





秋冬が教室に戻ると、クラスのみんなは文化祭の準備をしていた。
「おう四世弟、おせーぞ。」
「悪い悪い。」
澄は口に釘をくわえ、トンカチを右手に持ち、頭にはちまきをしめていた。
「うん、一つ聞こう。そのはちまきはどこから仕入れた?」
「オレのカバンに入ってた。」
「…あそ。」
澄はトンカチを振り下ろす。どうやら、看板を作っているようだ。
「メイド喫茶がよかったか?」
「あぁ、男のロマンだ。」
なにがロマンだか。
「そういや、女子が少ないな?」
秋冬が教室を見渡す。女子は数人しかいない。
「家庭科教室にエプロン作りに行った。」
どうやらメイド服ではないようだ。澄のテンションが低い。
「男連中はそれを手伝いに行ってるよ。」
女が見たいからだと、秋冬は気付いた。
「なぁ、優魅ちゃん、かなり落ち込んでるぜ…?」
「知ってる。お前までオレを責めるか…?」
澄は笑う。
「責める気はねぇよ。…ただ、お前がうらやましくてなぁ。」
澄はトンカチを秋冬に渡す。
「…なに?」
「人に好きって言われるのって、幸せな事だよなぁ。」
「いや、だからこれ…、」
澄は釘も渡す。
「…お前これくわえてたよな?」
「オレトイレ行ってくるから、少しの間やっててくれな。」
澄は教室を出た。
「ったく…。」
秋冬は看板を作り始める。
「秋冬君〜!」
後ろから声が聞こえた。秋冬は振り返る。
「なに?」
「これどうかなぁ?」
女の子が見せたのは、コテコテのピンクフリルエプロンだった。
「私これ作ってきたんだけど、全員分用意しよっかなぁ?」
秋冬がエプロンに触れる。
「そうだね。みんな恥ずかしくない?」
「まぁ…ちょっとね…?」
秋冬は笑う。
「いいと思うよ。まぁオレの意見なんてあてにしないほうがいいけどね。」
女の子は首を振る。
「そんな事ないよ。ありがとう!」
「いいよ。あ、ちょっと目ぇ閉じて。」
「えっ!?」
目を閉じる前に、秋冬は女の子の頬に触れた。
秋冬は微笑む。女の子は、目を閉じられなかった。
「ほら、糸クズついてる。」
女の子の顔が、一気に真っ赤になる。
「あ…あの…家庭科室戻るねっ!」
女の子は走って教室を出た。
「なーーにからかってんだ?」
澄がトイレから戻ってきた。
「からかってなんかねぇよ。」
秋冬はトンカチと釘を澄に返す。
「オレ寝るわ。」
「自宅みてぇに言ってんじゃねぇ。暇なら家庭科室行け。」
「わかった。」


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