想いの温まる場所-7
…でも、今それを考えた所で栓ない事。こういう関係を望んだ時点で覚悟は出来ていたし。
それに、これを口にすれば、きっと奏子は悲しそうな顔をするだろう。
それだけは嫌だ。
教職員としてのタブーをおかしてまで、奏子はこの関係になってくれたんだ。
もうこれ以上困らせたくない。
素直じゃなくて、
照れ屋で。
でも可愛くて、愛しくて、
全力で守りたい大切な人。
溢れだす温かい感情。
奏子にも伝わるだろうか。
瞳を開いた奏子と目が合う。
カーテンからもれる昼下がりの陽射しの中で、奏子が微笑んでオレの額の汗を拭ってくれた。そのままその手が頬に添えられたと思ったら、勢いよくムニッとつねられる。
「いっ…」
痛みに顔をしかめると、奏子は少し冷ややかな声で言った。
「…吸血鬼のお兄さんはそろそろ教室戻ったら?」
やっぱり少し怒ってる?
…うぅ、なんかほろ苦い。急に現実に引き戻される。
ちまちまと後片付けを終えて、視聴覚教室に戻ろうと保健室のドアに向かおうとした時。
「また後でね」
背後からの奏子の声。
後ろを振り返ると、少し照れた様な顔で手を振ってくれていた。
「うん、また後で」
言い残して保健室を後にする。
ただそれだけで浮かれてる自分。
さっき教室を出てきた時の不安はどこにいったんだろう。
心に湧きあがるあたたかい余韻に浸りながら、視聴覚教室に向かった。
―――その後。
衣装を着たまま暫く消えていたオレはクラスの皆にこってり絞られ、次の日からの文化祭では遊ぶ暇なくフルタイムで働かされる事になってしまった。
高校生活最後の文化祭はなんだかほろ苦いものとなった。
そして、奏子の筋肉痛が心なしか(?)酷くなり、暫く治らなかった事は言うまでもない…。