『限りなく広がる不安と共に』-6
『あのね? その…なんていうか…あの…ね?うぅ…聞き…ずらいんだけど…』
「…うん、ゆっくりでいいよ? 待ってるから」
心が暖かくなる一言。
この一言だけで私、ご飯三杯はいけます。
いや、意味わからないですよね。
『うん…その…ね? 荒木君て…どうして…その…なんていうかぁ…私の事を?』
顔から火がでるんじゃないかってぐらい熱いです。
詰まりっぱなしで伝わりましたかね?
恐る恐る顔を見ると…笑ってました。
「もしかして悩んでた?」
…へっ?
「あぁ、ごめんごめん。 今日、俺も同じ事考えてたから。 つい可笑しくて」
ドキッとしました。 言葉が胸に囁きかける様にジワリと染み渡ります。
荒木君も…不安だったんだ…
「ホラさ? 俺ってリキとかスグルに比べたら凄い平凡じゃない? だからなんで俺なのかなぁって。」
今日、何度も聞かれた質問。 実は、初めて聞かれた時からずっと考えてました。
『それは… 荒木君が…普通だから。 変な話だけど、平凡だから好きになったんだと思う…』
「へっ?」
不思議そうな顔してます。 そりゃそうですよね、普通が好きなんて変ですものね。
でも
『うん。…その…うまく表せないんだけど、普通でいるのってホントは凄く難しい事だと思うの。 平凡て、実はかなり平凡じゃないし、 普通でいるって結構力がいると思うんだ?』
「俺がそれ?」
『そう…だと思う。 自分でもあんましわかってないんだけど… たぶんそういう事だと思う…』
全部言ったら恥ずかしさが込み上げてきました。 またゆでダコ状態ですぅ…
「…うん。 なんつうか…ありがと。」
『いっ、イヤ!私もうまく言い表せなくて…』
何故かそこで黙ってしまいました。 最後の言葉が喉に詰まっては消えます。
すると荒木君が言いました。
「俺は…そうだな。 あえて挙げるなら… 蒼井さんが、俺とは逆の人間に見えたから…かな?」
…? どういう意味だろう?
「俺ってさ? あくまで俺の意見だけど、引っ込み思案なタイプだと思うんだ? なんかこう…リキとスグルよりは前にでれないっつうか、なんと言うか。 感情より理性で行動するタイプっていうの? あんな感じなんだ。」
そうかもしれない。
荒木君はどっちかと言えば、頭を使って話をするタイプに見える。
「けどさ?蒼井さんて、凄い感情を表に出すし、俺と話してる時も急に沈んだり、かと思えば笑ったり。いつの間にか驚いてたり。 良い意味で俺とは違う種類の人間だなって思ったら…好きになってた。 あえて理由を挙げるならそれぐらいかな」
そう一気に言って真っ赤になる荒木君。
すごい嬉しい。
録音しときたいぐらい私の中でベストな台詞ですね。
『嬉しい… あり…がと』
心から込み上げてきた言葉でした。 本音以外、出る気しません。
ますます好きになっちゃいます。
『私も好きだよ?』
そう言って初めて荒木君に甘えました。
荒木君の胸に飛び込みました。
荒木君は驚いたみたいだったけど、やっぱり優しく私を包んでくれました。
その手がとても暖かくて、私の悩みは払拭されていきます。
私は彼を愛しています。
それだけで荒木君は答えてくれます。
そう、それだけで悩みなんて消えていきます。
非凡の前に消えていく平凡の様に……