正夢〜幸福-1
俺は、リビングのソファに腰かけている。テレビを見ながら、時々キッチンに声をかける。どうやら俺の手助けはいらないらしい。
まだ昼前だからだろう。窓から入ってくる日は眩しいけど、暖かな雰囲気を運んでくれる。
いい天気だな……。
そこで、はたとある疑問に気づく。
俺、誰の料理を待ってるんだ?
そんなことを考えていると、トレイを持って、あいつがやってきた。トレイの上には美味しそうな二つのオムライス。
ふと顔を見る。そこには、あいつの顔が……。
ピピッッ、ピピッッ、ピピッッ……。
「んぁ……」
目を醒ますと、そこは見慣れた景色……俺の部屋だった。
「夢、か」
大体の夢の内容は消え去っていたが、唯一、オムライスが出てきたのだけは憶えていた。
美味そうだったなぁ……。
今日の夕飯はオムライスにしてもらおう。そう思いながら階段を降りていくと、不意に微妙に耳障りな鼻唄が聞こえてくる。
音の発信元は、オフクロだった。
「どうしたんだよ、母さん?朝から鼻唄なんか歌って。しかも微妙に新しいヤツ」
後ろから声をかけると、オフクロは今まで俺がいたことに気付いていなかったのだろう。
少し驚きながらこちらへと振り返る。その顔は、やたらと上機嫌だ。
『あ、翔。お母さんとお父さん、今日の夜から少しでかけるから』
どうやら外出するらしい。だから機嫌がいいのか。
家の両親は、ここでは割愛するが、見てるこっちが頭をはたきたくなるくらいにラヴラヴだ。どうやら二人とも、相当頭に熱が回ったのだろう。おかげで息子の俺は頭が悪い。
我が家は、俺、両親、そして今は家を離れて一人暮らしをしている兄貴を含めて四人家族だ。
以前は、二人を見ていてもうんざりするくらいで済んだのだが、この頃親父の帰りが遅くなってから、家の中でのラヴラヴ濃度が急上昇している。もはや、怒りを通りこして呆れ、また一周して怒りがこみあげるくらいだ。
なので、まぁいなくなることは非常にありがたい。