正夢〜幸福-7
「ちょっと待ってろ」
恵に言い、二階の自分の部屋へと上がる。中に入り、毛布を持って下へと戻った。
(ちょっと脅かしてやろう……)
静かにリビングに入り、俺は部屋の主電源を落とした。
『きゃっ!しょ、翔ちゃん!?』
俺はソファに座り、恵を抱き上げて自分の膝の上に置いた。そして、毛布をかける。うむ、これなら風邪はひかんだろう。
『翔ちゃん!部屋の明かり点けてよ!』
「駄目だ。心霊ものは雰囲気が大切だからな」
恵はしばらく駄々をこねていたが、しばらくすると諦めてテレビを見始めた。
『ひっ……』
『うわぁ……』
『いやっ…』
心霊写真や体験談が流れる度に、小さい体を震わせる。俺は恵の体をずっと抱き締めていた。
「恵…?」
『んん……』
番組が終わると、規則正しい呼吸音が聞こえる。どうやら終盤で恵は眠ってしまったらしい。
『翔ちゃん……』
どうやら寝言のようだ。だが、夢を見ながらも俺の名前を呼んでくれることが嬉しかった。
「明日はオムライスな……」
俺は、そう恵に耳打ちをした。恵の体はとても暖かくて、なんだか安心できた。ずっと、ずっとこんな幸せが続けばいい……。そう思いながら目を閉じた。
瞼(まぶた)ごしに光を感じて目を醒ます。そこには、抱きしめていたはずの恵の姿が無かった。
「恵?」
『翔ちゃん、やっと起きたんだ!遅いよ〜』
声のした方を振り向くと、キッチンからいい匂いが漂ってくる。どうやら朝……ではなく昼飯を作ってくれてるらしい。
『顔洗ってきなよ、あと少しだから』
「ああ、わかった」
洗面所に向かい、顔を洗い歯を磨く。一通り終わった後にリビングに戻ると、まだ恵は料理をしていた。