投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『正夢』
【青春 恋愛小説】

『正夢』の最初へ 『正夢』 28 『正夢』 30 『正夢』の最後へ

正夢〜幸福-6

『また来るからな!』
「来んでいい」
『高瀬さん、ごちそうさまでした』
『大丈夫だよぉ。気にしないで』


食事が終わり、後片付けをする。作業が終わると、みんなは帰っていった。


「先に風呂使っていいよ」
『ありがと、先に入るね』


恵はそう言うと、リビングから出ていった。
恵は全く俺を警戒していない。俺がこんなにも苦悩していることなど毛程も感じていないだろう。


(翔……)


再び邪な感情が姿を現す。だが、今はそれを振り払う事が出来なかった。


(俺に任せろよ……お前だって本当は俺に任せたいんだろう?)


誘惑の言葉を必死に耐える。だが、幻が放つ言葉はぐわんぐわんと俺の中で反響していた。と……。


『翔ちゃん、あがったよ』


一体どれほど悩んでいたのだろう。気が付くと、もう恵は着替を済ませ、リビングへとやって来た。


「ああ、悪い」
『……なんか、寂しくなっちゃったね』


恵がぽつりと呟く。確かに、うるさい仲間たちがいなくなった家は、少し寂しさを漂わせていた。



俺は、恵がこの家に来た理由を思い出した。恵は怖いのだ。一人でいるのが。渉たちを呼んだのも、恥ずかしいのを我慢して俺の家に来たのも……。

下心を全開にしていた自分が恥ずかしくて、直ぐにリビングを飛び出した。さっさと服を脱ぎ、風呂場に入る。速攻で熱いシャワーを浴びて、自分の心を静めた。




リビングに戻ると、恵はテレビを見ていた。バラエティ番組なのだろう。その横顔は笑っていた。

恵は、俺が来たことに気付くと、テレビのチャンネルを回し始めた。しかし、すぐにその指が止まる。


『あ……』


テレビ画面には、今度はホラー映画ではなく、心霊番組が流れていた。

恵は怖がりなのだが、よくこういう番組を見る。昨日の映画も、両親がまだ家にいたから見ていたのだろう。

俺は仲間内では、一応強い部類に入る。

恵は何度も心霊番組と他の番組を行き来している。


『正夢』の最初へ 『正夢』 28 『正夢』 30 『正夢』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前