正夢〜幸福-5
『翔ちゃん、なんで泣いてるの?』
「アハ、アハハ……はぁ…」
結局、いつものメンバーで集まってしまったが、これはこれで正直に面白い。
少し話した後、女の子たちはキッチンへと消えていった。
「なんで来やがった?」
『いいじゃん。高瀬に誘われたんだから』
『俺も恵さんに……』
まぁもう過ぎてしまったことなのでいいのだが。
『まぁ大丈夫だよ。俺明日バイトだから泊まりはしないからよ。珊瑚もな』
『俺も、明日はエルナと遊ぶんで…』
泊まりはしないの言葉に安堵する。こいつらが泊まると絶対に飲むのからな。飲み潰れるのは勘弁だ。
男三人で話していると、キッチンからいい匂いが漂ってくる。彼女たちは、三人ともに料理が上手い。
『ま、今日は頑張ってくれ。応援してるぜ』
『俺も応援しますよ。』
「うるせぇ」
せっかく落ち着きを取り戻していたのに!余計なことを言いやがって……。
とりあえず考えることは置いといて、俺はみんなとの食事を楽しんだ。
『エルナちゃんは明日どうするの?』
みんなで料理をぱくついていると、不意に恵がみんなに尋ねた。俺たちの話しは聞こえてなかったからな。
『私は、礼拝を済ませてから護くんとちょっと……』
エルナちゃんが顔を赤らめながら答える。鹿見から聞いた話だが、エルナちゃんは一応クリスチャンらしい。
まぁ本人はあまり気にしないので、俺たちも気にしてはいない。礼拝をすることくらいを除けば、生活は全く変わらないのだから。
恵が今度は珊瑚に尋ねた。
『私は大会で道場のみんなの引率だからなぁ……』
珊瑚の家は一応道場をやっている。俺も中学の途中までは通っていた。
表向きには空手だが、珊瑚の父ちゃんが気に入った相手には、実戦格闘技を教えてくれるのだ。
道場は珊瑚の家の裏手にあるため、渉はしばらくこの事実を知らなかったらしく、珊瑚の父ちゃんと会った時はとんでもない目にあったらしい。
渉は今度こそ倒すと隣で意気込んでいるが、それは無理な話だろう。あのおっちゃんは熊殺しをするほどなのだから。なんでも、いつかはチュパなんとかを倒すとか言っているらしい。元気なことだ。
みんなで会話を楽しみながら料理を食べる。酒は入らなかったが、中々楽しい一時だった。