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かつて純子かく語りき
【学園物 官能小説】

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かつてタキタかく語りき3-2

「ただいま〜!」
部屋に戻ってきた彼女はパジャマを脱ぎ捨てた霰もない姿であったので、僕は思わず吹き出してしまった。
「な、なんちゅう恰好してるんですかっ!?」
カーテンの隙間を素早く閉めると、当の本人はけろりとしている。
「だ〜いジョブだ。遠くから見たらオトコに見えるに決まってるって」
と、言う彼女の胸のふくらみは確かに緩やかだ。
むしろ平坦だ。
が、しかし。
あなたは『女性』なんですっ!
「お願いだから、気を遣ってくださいよ」
思いがけず情けない声が出てしまい、ジュンもそれに驚いたように振り向いた。素直に僕の前にちょこんと立って、「ごめん、タキタ」と謝ってきた。
「ん」
なんだかとても愛しくなってしまい、ぎゅうと抱きしめ、白く頼りない首筋に紅い鈴をつけてやる。
「んン……」
くたんとしなだれかかる彼女の肩を起こしてやり、服を着るよう促すと小さく頷いた。
「さ!あったかい服を着ていってくださいよ」
洗面所に向かう後ろから、
「ゼンゼン寒くないぞ!!」
という声が聞こえて、僕は思わず笑ってしまった。



白銀の絨毯に、二人分の足跡がずっと続いている。ひとつはハの字に先が外を向いており、もうひとつは真っ直ぐ前を向いていた。
きゅ、きゅと音を鳴らして雪道を歩く。
もふもふの手袋から、じんわりと彼女の温度が伝わってきた。そこだけ、ほっこり暖かい。
「寒くないですか?」
僕がこう聞くと、決まってジュンはこう答える。
「寒くないぞ」
いつもと変わりないテンポを味わう至福のひとときである。
僕らは、畦道や土手を歩きながら雪見を楽しんだ。いつもと違う風景に、思わず心が弾んでしまう自分にわくわくする。
まだまだ、僕もコドモだ。
僕らは、ミニ雪だるまを作って茅野さんの部屋の前に置き、大学の文学部棟入り口には、やや時期遅れの等身大モリゾーとキッコロをディスプレイしておいた。
はたから見れば、それと気づかない出来ではあったけども。
「昼には、コイツらも溶けてしまうンだろうな」
ジュンが赤い鼻をすんと一啜りしてから、目を伏せた。
「また会えますよ」
そう言って頭をぽんぽんと撫でると、彼女は大きな瞳を細めて笑った。
しばらくぷらぷらしていると、僕のお腹が切なげに一声鳴いた。それを聞いた彼女がにやりと口角を上げる。
「くれぇぷ、食べに行くか?」
そんな僕が、ジュンの誘いに乗らないわけがない。二人で並んで歩き始める。肩をすぼめているジュンに、こう切り出した。
「寒いね」
しばらく窺っていると、彼女は「うん」と口だけで答えた。
「これ」
念のために用意していた上着を、彼女に着せてやる。
「ごめん」
そして、申し訳なさそうに目を伏せる。
「寒くなると、あなたは元気が無くなりますからねぇ」
ぶかぶかの上着の前を合わせてやり、寒さでリンゴ色になった頬を手で包み込む。
「冷えましたね」
「……うん」
ジュンは外だと驚くほど照れ屋さんだ。付き合いたてのころは、手をつなぐのでさえ、ぎゃあぎゃあ叫んだものだ。大分慣れたのか、今では、自分から手を差し出すことだってある。
ま、お互い進歩したのかもな。


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