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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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目の前のきみ-1

『…………』
車のエンジンをかけ、ネクタイを緩くする。
窓をあけてタバコを吸おうとしたが、この前アイツに車内での喫煙を注意されたので渋々やめることにする。
腕時計で時間を確認し、車を発進させる。


あれから五年。


俺たち六人は、今日、久しぶりに全員集合する。




「瞬!おっそいよ!」
『………うっせ、路上で叫ぶな』
俺は車を歩道につけ、アイツを向かえ入れた。
「ふう、楽しみだね!六人で集まるのなんて結婚式以来だよ」
『そうだな』
待ち合わせ場所まで車を走らせながら、チラリと助手席に目をやる。
「あっ!わき見運転禁止!」
『…………』


明石悦乃。
俺がガキの頃に出逢い、大学で再会した女。
まあいろいろあったが、今でもコイツは俺と一緒にいる。
さすがにこの年になると、多少は大人っぽくなった気がする。
外見は。

今では例の発作は全く起きず、持病を乗り越えて頑張っているみたいだ。
ちなみに今は普通に会社のOLをしているが、突然、保母になりたいと言い出して只今勉強中らしい。


「つーいたー」
場所は俺たちが散々お世話になった居酒屋“武士道”である。
車を駐車して扉を開くと、すでに一組来ていた。
「なんや瞬、車で来たんか」
『帰りは専属ドライバーがいるからな』
そう言って悦乃を見る。
「悦乃ちゃん、久しぶり。相変わらず呑めへんのやな」
「久しぶり!灰慈くんは相変わらず関西弁なんだね」
「なんやそれ」
灰慈が苦笑いする。

冬堂灰慈。
瞬と高校からの付き合いで、今でも二人はよく会っている。しかし、内容は専ら恋愛の相談である。
現在、灰慈は父親の総合病院で医者をやっている。本人曰わく、“やはり現実は厳しかった”らしい。
それでも灰慈らしく、楽しくやっているようだ。

「瞬、久しぶり」
灰慈の隣に座っている女が声をかけた。
『おう、由貴、灰慈とはどうだ?』
由貴の隣に座る。
「全くあのバカ男、いっつもヘラヘラしちゃってさ」
「あのー、俺ここにおるねんけど」
「あ、いたの?」
「えぇっ?」
灰慈と由貴の関係は相変わらずらしい。
灰慈に同情しながらタバコに火をつけた。
悦乃と由貴は楽しそうに話している。


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