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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ―目の前のきみ-3

一ヶ月後。
俺の腕も完治し、また普段と変わらぬ毎日が繰り返されていた。
まあ悦乃とは恋人という関係に変わっていたのだけども。

今日も二人は仲良く出かける。
「ドライブなんて楽しみ♪」
悦乃はその場でくるくると回る。
俺は先日、かなり無理をして車を購入した。
こいつのキラキラした笑顔が見られるなら、数年先まで続くであろうローン地獄も苦にならないだろう。


「もっとスピード出せ出せー!」
『お前な…』
「ねぇ、それで今日はどこ行くの?」
『ん……みんなのとこ』
「…………ドライブじゃないじゃん」
はあー…、と悦乃は大きな溜め息をつくが、無視してハンドルを切る。

10分ほどで大学に到着する。
『……お、いた』
青空と葵を発見し、車を近付ける。
「やっほー」
「よー瞬、乗り回してんね」
『ああ』
「えっちゃん幸せそうだね♪」
葵が突然そう言った。
「そう?えへへ」
『灰慈は?』
「……あ、きた」
「お…」
灰慈と由貴は笑顔で手をつなぎながら歩いてくる。まだこちらに気づいていないようだ。
『灰慈』
「おー、瞬」
「へ?瞬!?みんな!?………ちょっと!触んないでよぉ!」
「え?ちょっと、由ぐへぇおっ!!」
灰慈は宙を舞った………気がした。
「あはは♪」
葵が笑う。
「な…んで……自分から手ぇ握ってきたくせに……」
「はは」
青空も爽やかな笑顔を見せる。
「もう!早く立ちなさいよ!みっともない!」
そう言いながらも由貴は微笑んでいる。
「なんでやねん…」
灰慈は苦しみながら苦笑いする。
『………楽しいな』
「うん!」
俺が笑うと悦乃もうれしそうに笑う。

俺達六人、出会えてよかった。
こんなに楽しく六人で笑いあえるから。

ずっと大切にする。

この友情も。

隣にいるきみも。


悦乃はもう記憶のきみじゃない。


「瞬?どうしたの?」
『あ、ああ……何でも』
「そっか!よかった!」



目の前のきみなんだ。


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