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終わりの合図と見知らぬ唄と
【青春 恋愛小説】

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「小さな記念日と覚えた歌と」-1

最近少し覚えた見知らぬ歌をノートの隅につづる私。
『単純な僕の単純な唄 涙を止めるためにある唄 不安をつのる夜は思い出して欲しい この日の僕は確かに生きる その日に君を見つけて生きる このなんでもない日が記念日になる だから…』
今では私の一番の歌になっている。
誰の曲かも、オリジナルを聞いた事もないけれど、私はこの唄を唄う彼がとてつもなく大切になっていた。


始めお昼を一緒したのも一ヵ月前になっていた。
季節は芽生えの季節から海陽の季節に変わろうとしていた時だった。
いつもの様に終わりの合図と共に、屋上へと向かう。 最近続くこの習慣は、今ではなくてはならない存在になっていた。
扉を開ける…広がるいつもの笑顔。のはずが今日は賑やかな風景が眼に飛び込んで来た。
「ごめん…柳サン…にぎやかなのは苦手って知ってるけど、ついてくるって聞かないもんで…」
バツが悪そうに謝る藤原君。隣りに髪の長い男性とおっとりした感じの女性が座っていた。
「はじめてまして!俺は青木 シンゴ(あおき しんご)名前はカタカナね♪よろしく!」
髪の長い男性が自己紹介する。
「始めまして。 私は夏木 千秋(なつき ちあき)っていいます。よろしくね」
おっとりした感じの女性が自己紹介をした。
「はぁ…よろしく…お願いします」
何が何だかわからない私は、マヌケな声で答えてしまった。
なんでも、最近藤原君が私と食事をしているから気になったそうだ。 三人は幼稚園以来の幼馴染みらしく、なるほどとても仲が良い感じがした。
藤原君独特のゆったりとしたトークペースに、マシンガンの様な青木君のしゃべりが奇妙にかみ合っている。夏木サンはと言うと二人のペースに負けず劣らずマイペースを貫いている。
「いやぁ、こいつが女誘ってメシ食ってるって言うからさぁ、気になって気になって。 もぉ夜も眠れぬ感じ?」
カラカラと笑いながら陽気にしゃべる青木君。
良かった…良い人っぽい。
「でも、普段、人とは話したがらない真がねぇ… どういう心境の変化なわけ?真?」
クスクスと話す夏木サン。
たよりになりそうな人だなぁ…
「どうって… まぁ一人で食べるよりはって思ったから… 迷惑だったかな?柳サン?」
とつぜん話をフラれ右往左往する私。
「そんな…! 迷惑だなんて…」
そんな事全然ない。 むしろとてもうれしかった。誰かに誘われるなんて初めてだったし、今もこんな賑やかな食事を夢見てたぐらいなんだから…


私がボソボソと話すのも気にならない様で、初体験の賑やかな食事は続いていく。 まだまだ多人数と話すのは慣れなくて、時たま話についていけない事もあるけど、本当に楽しい。

ふと藤原君と眼が合う。
キラキラした瞳に見つめられると恥ずかしくなる。 そんな私を見てクスクス笑う夏木サン。
夏木サンは女の私でも綺麗だと思える目鼻立ちをしている。 それもあいまって微かに笑う夏木サンの顔は光に当てられた女神像の様に美しいと思えた。
やっぱり、藤原君もこういう綺麗な人の事好きになるんだろうなぁ…

以前なら全く思い付かない考えに、私は藤原君の事が好きになってきている事に気付いた。


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