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終わりの合図と見知らぬ唄と
【青春 恋愛小説】

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「始まりの鐘と悲しい唄と」-1

月曜というのに足取りは軽く、学校へ向かう道もいつもと違って見え、どこかよそよそしかった校門も今日はしっかり自己主張してるように思えた。
一週間前、屋上で話しかけられた事により、私のスクールライフは変わったように思っている。 ただ授業を受け続け、一人でご飯食べて、当たり障りのない態度で過ごしていた消化していくだけの日々とは変わった。
一日に…楽しみが出来た。


私の名前は柳 葵(やなぎ あおい)
こうやって頭の中でいつもしゃべってるのが好きな女です。
高校生活に光を見出だせない、不器用な人間。 人と話す事が苦手で、絶えず人との接触を避けて生きてきた。
けど、すごく寂しがり屋で、誰とも話さない一日に絶望を抱いている。
そんな私に、光を当ててくれる人が出来ました。


誰よりも早く教室に入り、いつもの如く日直の仕事をする。 誰に言われた訳でもないが、こうでもしないと自分が生きてる気がしなかったからだ。それ意外に意味はなかった。
ふと、誰もいないはずの学校に甘い、切ない歌声が聞こえてくる。 私の生きてる楽しみの一つ…彼の歌声だ…。
それはまるで雨にうたれた黒猫の様な、はたまた、沈み行く夕日を見つめる少年の様な…そんな歌声なんだ…
私は勢いよく駆け出す。静かに聞こえる見知らぬ唄の方へと。
「おはよう。今日も早いんだね?」
扉を開けると同時にかけられる声。 いつもみたいにくしゃくしゃな笑顔で向かえてくれる藤原君は待っていたかの様に切り出した。
「今日も良い天気だね。 暖かくて、気持ちいい朝だ。」
ぐーっ、と背伸びをする姿はしかし悲しい、寂しい眼をしている。 私とかぶる孤独な眼…
「いつも大変だね?日直の仕事。なんで毎日やってるの?誰かに変わってもらったりしないの?」
不可思議そうにのぞきこんでくる顔。
特に意味はないのだけれど…
「ん〜…なんでだろ? 普段誰とも接しないからなにか残しときたいの…かな?………わからないです…」
本当にわからない… 藤原君には知ってて欲しいけど、うまく言葉が見つからない。
「ふ〜ん…そうなんだぁ… まぁ…あるよね、そういうのって。僕も意味もなく黒板綺麗にしたくなるもん」
クスクス笑いながらあわせてくれる。でもそれはウソっぽくなくて、本当にそういう人に、私と同じ種類の人間に見えてくるから不思議。

彼は藤原 真(ふじわら まこと)くん。 私に始めてまともに接してくれた男性…? ちょっと表現がおかしいかもしれないけど、大事な人。恋人とかそんなんじゃなくて…大切な人。
この学校で唯一私が話をする人でもある。
黒い髪の毛にいつも悲しそうな声、吸い込まれる様な真っ黒な眼が印象的な人。
くしゃくしゃにして笑う顔がとてもかわいい。
普段あまり話さない私の話も熱心に聞いてくれるとても良い人。
でも、いつも悲しげで、私に似てるとたまに感じる。…顔がとか、そんなんじゃなくて。

「今日もここで食べるの?お昼。」
そぅ…私はいつも屋上でお昼を食べている。 前は一人だったけど、今は藤原君が誘ってくれる。
「今日も一緒しちゃダメかな?」
断る理由なんてない。 と言うより、最近、私はそれが楽しみで学校に来ているみたいなもの。
ゆっくりと、一回うなずく私。
「良かった。じゃあ…また」
そう言って降りてった藤原君。その背中を見ていて、すごく胸が苦しかった…
「もっと話したかったな…」
一人、ボソリと呟いた。

遠くの方では始まりの鐘がなっている。長く、悲しい、学校の始まり。
前までは聞くに耐えない常闇の音だったのが… 今では少し明るく聞こえた。
私は教室へ駆け出す。
見知らぬ唄が、聞こえてくる気がした。


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